第18話 これがSクラス⑤

 場面は学園の食堂。


 模擬戦が終わったシオン達はカイゼルを回収して食堂に来ていた。


 基本的に昼食はここの食堂で食べるか、学園の外の店で食べるか自分で選択できる。


 シオン達は初日だということもあって食堂にしたのだ。


「うわー…シオン達の模擬戦見たかったなぁー…」


 カイゼルは気絶してしまったことにより、マリナ含めた三人の模擬戦を見逃したことを残念がった。


 そんな彼は何らかの肉のステーキを食べている。

 その他にもスープ、サラダ、大きめのパン……


 かなり大量に食べているが、気絶するまで魔力を使ったので、そのエネルギーを補充するために必要なのだろう。


 いや、単にカイゼルが食いしん坊なだけかもしれないが。


「シオン君とシルフィーネちゃん、接戦で凄かったです…!」


 マリナは目を輝かせて語る。


 因みにマリナがシルフィーネのことを殿下呼びをしなくなったのは本人が許可したからだ。


「いいなぁー!」


「でもカイゼル。授業の終わりにフィオナ先生が、これから定期的に模擬戦するって言ってたよ」


「え!本当⁉じゃあ次こそ俺と模擬戦しようぜ!あ、でもイーサンとの決着もついてないな……」


「まあ、そこらへんはその時考えればいいよ。なにせ六年間もここにいるんだからね」


 卒業するまでの六年間でなら幾らでも模擬戦はできるのだ。


「そうよ。私は卒業までにはシオンに勝つわ」


「まあ、その日を楽しみにしてるよ」


「その余裕そうな顔をいつか歪ませてやるわ…」


「はわわわ…シルフィーネちゃんの顔が…」


 シルフィーネは決意する。


 だがシオンにとってそれは心外だった。



 余裕?否!否否!


 実はこの男かなり焦っていた。

 今回の模擬戦も、上空から回り込むという作戦がハマらなかったらもっと長期戦になっていたし、苦戦していたのだ。


 王都に来てから最近シオンは思っている。


 あれ?これ学園卒業するころには勝てなくなるんじゃね?、と。


 流石に負けることはないと思うが、勝つこともだんだん難しくなってきているのも事実。


 だからシオンはこれからコッソリと鍛錬する予定だった。


 シオンは意外と負けず嫌いなのだ。



「午後からの授業ってなんだっけ?」


 ふいにカイゼルが聞く。

 しっかり飲み込んでから話しているので、そこら辺の教育はきちんと行われてきたのが伺えた。


「たしか魔術理論ね。くれぐれも寝るんじゃないわよ」


「うっ…分かってるよ…。けど聞いてて眠くなるんだよなぁ‥」


「まあ午後は眠くなっちゃうからねぇ」


 シオンも前世ではよく午後の授業は眠くなっていた……


 あれ?なってたっけ?まあいいか。


 あまり思い出せないが、午後に眠くなるというのは殆どの学生が陥る現象だろう。



「あれ?あれってイーサンとアイカ?」


 カイゼルが指さした方へ一同顔を向けると、


「あ、本当だ」


「あの二人って知り合いだったのね」


 二人で食べているイーサンとアイカがいた。


「知り合いというか、婚約者ですよ?」


「「「え?」」」


 マリナの言葉に三人の驚きの声が揃う。


「こ、こ、婚約者ってあの婚約者?」


 シルフィーネが変な声を出しながら再度聞く。


「はい。あの婚約者ですけど……」


 よくよく考えてみれば婚約者がいることは別におかしくない。


 逆にシオンとシルフィーネやカイゼルとマリナが、まだそういう話が全く来ていないのが逆におかしいのだ。


「別におかしいことじゃないか」


「んー…よくわかんないや」


 カイゼルは良く分かっていないのか、気にせずむしゃむしゃとご飯を食べるのを再開した。


「私は婚約の話なんて何にも知らないわ」


 普通シルフィーネのような王族は幼少期から自然に決まってそうである。


「もしかして陛下が握りつぶしてたりして」


 陛下の家族愛は尋常じゃない。

 縁談の一つや二つを握りつぶしても何ら不思議じゃなかった。


「流石のお父様もそんなことしないわよー」


「……」


「え、してないわよね?」


 シルフィーネもその可能性が高いと思ったのか、まさかと不安になる。


「まあ問題になってなければいいんじゃない?というかシルフィーネは婚約者が欲しいの?」


「はぁ⁉そんなわけないじゃない!そういうあんたはどうなのよ」


 少し拗ねた顔でシルフィーネは尋ねる。


「別になんも考えてないなぁ…。ただいずれは決めないといけないけどね」


「そう…」


 そんなシオンとシルフィーネの会話をチラチラと見ているのが一人いた。


「(あれ絶対シオン君のこと意識しているよねっ?ねえカイゼル!ほらっ)」


「な、なに?マリナ…」


「(静かにっ!ほら、今いい感じだからっ)」


 マリナはカイゼルに好意を抱いていることもあって、このような話には敏感なのだ。


「(え?なにが?)」


「(ああ…そういえばカイゼル鈍感だった……)」


 しかし、状況を理解していないカイゼルにがっくりと肩を落とすマリナ。


 カイゼルにはまだこの話は早かったのだろう。


「マリナとカイゼル。二人して何やってるの?」


「い、いや、何もないですよ…?」


 急に声をかけられて動揺しながらも言い訳する。


 間違っても『シルフィーネとシオンが良い感じだったので』なんて言えるわけがない。


「そう…?あ、そろそろ時間だから片付けよっか」


「そうね」


「(もぐもぐ)…。よし!食べ終わった!」


 カイゼルは残りを口へかき込み、完食した。


「明日はどこで食べるー?」


「ふふっ、気が早いよーカイゼル」


「流石食いしん坊」


「俺の胃袋は無限大!」


「はち切れそうな癖に何言ってるのよ」



 そんな感じで、やいのやいの軽口を交わしながら教室に戻るシオン達だった。





―———————————


こんにちは文月です。


此処まで読んでくださりありがとうございます。


一旦ここで一つの区切りとなります。

が、まだまだシオン達の物語は続きますので是非ともご期待ください。


最後に、面白かったらフォローと★評価をしてくださると嬉しいです。


(コメントもどしどしお待ちしております!

 そしていつも誤字報告してくれている皆様に感謝!!)

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