第16話 これがSクラス③
フィオナ先生がカイゼルとイーサンを治療室へ連れて行って戻ってきた。
「じゃあ次行こうか!えーっと、次はミアとマリナ!」
実は他の生徒の模擬戦は終わっており、カイゼル対イーサン、マリナ対ミア、そして最後にシオン対シルフィーネとなっていた。
「マリナ頑張ってね」
「全力を出すのもいいけどカイゼルみたいになっちゃだめよ」
「うん…!頑張ってくるね!」
少し緊張しながらもマリナは訓練場の中心部へ向かう。
「マリナってどういう戦い方するんだろう?」
「ここに来る前に少しカイゼルが言っていたけど、魔術師みたいよ」
「魔術師かー…あれっ、ミアって人は短剣だね」
シオン達には様々な武器の中から短剣を選んだミアの姿が見えた。
「小柄だから俊敏さを活かす、って考えると納得だわ」
「確かにね」
ミアは四席、対してマリナは八席。
この数字だけ見たら圧倒的にミアが有利だが、この順位には座学の成績も含まれているので一概に言えない。
現に、先程のイーサンは三席だが、七席のカイゼルと引き分けだった。
これまでの模擬戦の結果を見ると、十席以上同士の戦いは拮抗しており、十一席以下の実力も拮抗している。
差があるのは二十席から十一席と十席以上の実力だ。
「お互い準備は良いか~!よし!では始め!!」
開始の合図を言い渡された瞬間、ミアが高速でマリナへ突進した。
それをマリナは冷静に『水壁』を前方に発動する。
ミアは一度立て直すために後ろへ下がり、
そこにマリナが『水槍』を四本作って飛ばし、
その全てをミアは風魔術で防御した。
魔術師にとって接近されるのは負けるのと同義。
もちろんそんなことはマリナは百も承知なので、次々と魔術を発動して一定の間合いを保つ。
『水鞭』『水球』『水矢』……
数多な魔術がミアへ襲い掛かるが―――
「余裕……」
身体強化を施した身体で軽やかに避け、『風壁』や『風刃』を放って相殺させる。
このまま膠着状態が続くと思われたが―――
「『風よこの身に纏え―風纏』」
詠唱した瞬間、その小柄な体は先程とは比にならない速さで動いた。
そのスピードでマリナとの距離を一気に詰める。
「っ!—『水盾』!」
咄嗟に『水盾』を発動するが、ミアは予測していたのか一瞬で方向転換。
そしてすぐさま踏み込んで攻撃をしようとしたが、
「———水渦』!」
「———んっ!」
マリナの体を中心にして『水渦』が発動。
その渦は高速で外へ広がりミアを飲み込まんとする。
先程の『水盾』はただの時間稼ぎ。マリナはこれを狙っていたのだ。
だがミアは風を前方へ放ち、自分を後方へ吹っ飛ばして飲み込まれるのを回避。
「むぅ…」
「ふぅーー…」
互いに睨み合い数秒、
「…『風刃』」
ミアは長さ二メートルの『風刃』を放つ。
「『水盾』」
二つの魔術が接触し、相殺され水飛沫が舞い上がる。
それが開始の合図となり再び始まる水と風の攻防。
高速機動をしながら攻撃を仕掛けるミア。
その全てを水魔術で防ぎ、時にはカウンターをしていくマリナ。
風と水が接触したときにできる水飛沫は、太陽光に照らされキラキラと光輝く。
「——竜巻』…!」
「——水渦』っ!」
巨大な『竜巻』と『水渦』が均衡して共に爆散————
「どこッ―—!」
マリナは爆散した余波でミアの姿を見失ってしまい、
「殺った……」
背後に気配。
咄嗟に手に持っていた杖を後ろへ向けた。
ガキィンと音が鳴り間一髪のところでマリナは防いだことを認識する。
「嘘っ……」
ミアは防がれたことで一瞬動揺し、
(危なかった…!)
マリナは安堵しつつもその隙を見逃さず、自分とミアの間に水を発生させて距離を取った。
「マリナ……強い…」
「ミアちゃんこそ強いよ……」
二人とも冷静になりながらもその胸は熱くなっている。
三度始まる攻防。
二人の実力は互角。
勝敗が付くとしたら一瞬の隙……または何らかのイレギュラー。
「——連鎖せよ―
水を圧縮させて爆発させる『
背後で次々と爆発していくが、走る回るミアには追い付かない。
だが、これでいい。
マリナは元から当たるとは思っていなかった。
(ここっ!)
マリナはミアの姿を確認すると、
「『唸れ囲え拘束せよ―水牢』っ!」
水魔術の『水牢』を発動させた。
周囲には今までの戦闘で使った水魔術の水が多量にある。
そう、マリナはこの魔術を使うために誘導していたのだ。
周囲の水が蠢き瞬時にミアを囲もうとして、マリナは自分の勝利を確信するが――――
「『閃光』」
「くッ……!」
突如として眩い光が満ちる。
突然目の前が光り輝いたことによりマリナは目をつぶり、集中力が乱された。
魔術は集中力が根幹にある。
その集中力が切れたらどうなるか。
マリナが途中まで発動していた『水牢』はその形を失い崩れ落ちた。
マリナは知っている、この隙が致命的になるということを。
まだ視界が白く染まっていながらもなんとか魔術を発動しようとするが―――
首にひんやりとした感覚。
「私の勝ち…」
いつの間にかミアがマリナの首に短剣を突きつけていた。
ミアは光魔術の存在を隠していたのだ。
全てはこの瞬間のために。
「参りました…」
ここからの逆転が可能なすべを持ち合わせていないマリナは潔く降参した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます