第12話 見学と再会

 学園の敷地は凄まじく広大で、移動するだけでもかなり大変だ。


 噴水が設置してある広場に、魔術と剣術で分かれている訓練場。

 

 校舎は生徒が授業を受ける教室がある一号館、専門の研究室がある二号館、職員室や会議室がある三号館、図書館がある四号館、食堂がある五号館の五つに分かれており、少し離れたところには寮がある。


 そしてシオン達Sクラス一行は、二号館に来ていた。


「ここからは研究している六年生がいるから騒ぐなよー」


 フィオナ先生が忠告し、皆を先導して校舎に入る。


 一号館が四階建てに対して、二号館は二階建てなので少し小さい。

 それでも日本の学校と比べたらとても広いのだが。


「君たちも六年になったらここにある研究室で研究するからな。よく見ておけ~」


 二号館は比較的簡素で、正に研究のためといった建物だ。


 この建物では六年の生徒が日々、卒業論文を書くための研究に勤しんでいる。偶に薬品のような香りが鼻腔を通り抜け、それが前世の理科室を想起させた。


 ある一画ではしんと静まりかえり、別の一画では人の話し声が聞こえる。


 そんな場所を、Sクラスの生徒は静かに見学していった。




 二号館の見学が終わったので次は、三号館、四号館、五号館といった順に見学をしていく。


 流石は王国最大の学園だけあって、校舎の内部もかなりの豪華さなので一瞬自分が学び舎にいることを忘れてしまうほどだ。


「はぁー…凄い歩いたわね…」


「もう教室に戻りたい…」


「ね…。けどまだ見学するとこあるんだよなぁ…」


「み、皆さん頑張りましょう……!」


 シオン、シルフィーネ、カイゼルの三人は散々歩き続けたことにより、気疲れしていた。

 その三人にマリナは一生懸命に微笑みかける。


 因みにマリナとはカイゼルの幼いころからの友達らしい。

 所謂、幼馴染という奴だ。


 自己紹介が終わり、いよいよ施設紹介となった時にカイゼルと共に挨拶に来た。


 彼女は子爵家なので最初、辺境伯家のシオンと王女のシルフィーネに凄い畏まっていたが、この時間で少し慣れたように見える。


 


「よし!これで校舎は全部回ったから次は広場から観ていくぞ~!」


 室内が終わったので次は外だ。

 広さ的に言ったら外の方が広い。


 噴水のある広場は周囲に木々が生えていて、より一層涼しげだ。

 そして傍らにはベンチがあり、そこで友達と会話をしたり休憩もできるようになっている。


 噴水もしょぼいものではなく、かなり大きい。

 前世でもこれほど大きいものはなかなかお目にかかれないだろう。


 広場は説明もくそもないのでただ見るだけで終わった。


 次は訓練場である。


「訓練場ではたぶん今授業が行われているから騒がしくするなよ~!」


 普通シオン達、十一歳や十二歳といった年齢といった子供たちは静かにしろと言われても騒がしくするのが当たり前だろう。


 しかし、彼ら全て貴族なので幼少期にしっかりとそういった教育が行われているのか、多少会話はするものの、驚くほど静かだった。



 訓練場に着く。


 訓練場は魔術と剣術の二つに分かれており、魔術の方には土魔術で作られた的がたくさん置いてある。


 広さは両方ともサッカーコート二面ぐらいで、周囲に観客席があり、訓練場が地面より下がっているようにできていた。


「どうだ!凄いだろう!」


 フィオナ先生が自慢するわけだ。


 ここでなら幾らでも訓練ができるようになっている。


 そして剣術の訓練場の方では数人が模擬戦をしていた。


「ん?」


 シオンはその数人に見知った顔がいるのを確認する。

 向こうもシオン達がいることに気が付きこちらへ向いた。


 十四歳にして身長は百八十センチに迫るであろう体躯に、くすんだ金髪に厳ついながらも整っている顔、そして極めつけは―――



「おおーい!シオン!」



 このバカでかい声である。


 シオンの名前が呼ばれたことにより、クラスの面々がシオンを見た。


「アル兄さん……」


 シオンが呆れたような諦めたような声色で呟くと、


「ああ、あの人がシオンのお兄さんなのね。聞いてた通りだわ」


 シルフィーネが納得し、


「なんだか俺、あの人と仲良くなれそうな気がする…!」


 カイゼルは何故か目を輝かせていた。

 何故、と疑問に思っていたシオンだったが思い出す。


 カイゼルの第一印象がアル兄さんと似ている、だったということを。


 そこまで考えて、アルがまだ手を振っていたのでこちらも恥ずかしく思いながらも手を振り返す。


「ああ、そういえばシオン君はアルト君の弟か」


 フィオナ先生は納得したように呟く。


「にしても君たちはほんとに似ていないな」


 そうなんです。

 びっくりするぐらい似ていないんです、とシオンは返事をする。


「まあ今は授業中だから無理だが、授業が終わったら存分に話してくるといぞ!」


 

 十分時間も過ぎたので、ちょっとしたハプニングがありながらも、シオン達は訓練場を後にした。

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