第25話 side-第二王女シルフィーネ
私には魔術の才能がある。
初めて自覚したのは三歳の時だ。
自分の魔術属性の素質を計る機会があり、その時に火属性の素質が驚異の八という結果を出した。
八という数字は王国の歴史の中でも数えられるくらいしかいない。その時は両親や兄や姉が褒めてくれたのがうれしかった記憶がある。
はじめこそ順調だった。
素質が八という結果を裏付けするかのように次々と魔術を覚えていって、自分に自信があった。
しかしその自信が崩されたのは七歳の時だ。
それまでは少しづつ今まで難なく発動できていた魔術が暴発したりすることが多くなり、 それが何度も続き、時間が経過するとともに更にその症状は酷くなっていった。
ある時それは保有魔力量が年齢の割に多いから、制御ができなくなったのが原因ということが判明したが、それが分かったところでどうすることもできない。
もともと勉強や礼儀などはあまり得意でない私は、私には魔術があるから大丈夫という柱を作って安心していたところで――――
その柱が崩れたのだ。
家族に心配させないように気丈に振る舞っていたが、その分部屋で泣いてしまうことが多々あった。
お父様も色々と探し回ったりしてくれたそうだが、結局見つからずじまいだ。
そして時が経ち、私は八歳になり夜会に参加しなければならなくなった。
正直憂鬱だったが、自分は第二王女という立場なので参加しないわけにはいかない。
そして不安になりながらも参加したその夜会は―――――
なぜか決闘騒ぎになっていた。
どうやらゲルガー侯爵家のグスタフという奴が難癖をつけたようだ。
グスタフが難癖をつけた相手は長く、きれいな銀髪を後ろで一括りにした女の子のような男の子と金髪の活発そうな男の子だ。シオンとカイゼルというらしい。
心配している私をよそに決闘をすることが決まってしまった。
*****
次の日の朝、決闘を見るために少し早く起きた。
他の貴族たちに見つからないように隠れて様子を見る。
グスタフの方はいかにも高そうな防具と剣を身に着けていて、シオンの方は逆に魔術師のローブに素手だった。
私は驚き、大丈夫かなと心配したが――――
そんな私の心配は杞憂だったようだ。
何故ならグスタフがどれだけ攻撃しようが全部正確に防御している。そしてその表情もグスタフの方は必死そうでシオンの方は最後の方は退屈そうな表情をしていた。
結局決闘はシオンという男の子の圧勝だった。
彼の堂々とした振舞。
私はそんな彼が羨ましかった。
自分もこんなことがなかったらもっと自由に魔術が使えるのになと嫉妬もしたした。
そんな嫉妬している自分が嫌でどうしようもない気持ちに襲われていたら、急にお父様とお母様に呼ばれた。
どうしたのだろうと、二人のところまで行ってみると二人とも嬉しそうな顔をしている。
どうしたのかと聞いたら、お父様が口を開いた。
―—シルフィーネのその症状が何とかなる方法を見つけた
一瞬お父様が何と言っているのかわからなかったが、再度お母さまが教えてくれてようやく理解した。
しかしそれは本当なのかと疑ってしまう私を見抜いたかのようにお父様が、
―——フォードレイン家のシオン君もシルフィーネと同じ症状だったらしい
それにも驚く。
じゃあなぜ彼はあの時難なく魔術を使えていたのか
―——シオン君が保有魔力の一部を封印する魔道具を作った
私は耳を疑った。
私と同じ年齢の令息がそんなものを作った…?そんなことあり得るの…?
真実だと思えない私だったがどうやら本当らしい。
私は改めて自分の症状が改善することを実感して涙があふれてしまった。
今までの苦労苦痛不安がその瞬間に解消したことで自分の感情をコントロールできずにしばらくは泣いたままだった。
明日に彼は来るらしい。
そしたらまずは感謝を伝えよう。
そして出来れば、私と境遇が似ている彼と色々な話をしてみよう。
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