第24話 国王からの要請

 決闘が終わり、その後王都の本屋へ行き魔術に関する本を買った。

 買った本は人が持っている素質や、そもそも魔術とは何なのかという真理を探究するような内容のものだ。


 王都の街からほくほく顔で帰ってくると、王城へ友人に会いに行っていたはずの父と母がいた。


「あれ?友人とはもう会ったの?」


 少し驚き訪ねると二人とも微妙な顔をする。


「あーそれがな…ちょいと問題が起きたというか…」


 父は歯切れが悪い。


「なに言い渋ってるのよ。そんな大したことじゃないんだから」


「そうだな…俺の友人がな、シオンに会いたいって言ってたんだよ」


「別にそれくらいいいと思うんだけど……」


 それで何故父が言いづらそうにしているのかが分からない。


「その友人なんだけどな、陛下なんだよ」


「へ…?友人って陛下だったの⁉」


 なんとまあびっくりなことである。

 王城にいるのだから偉い人だとは予想していたが、その偉い人の中でも一番だったとは。


「ああ、俺たちとゼルダス達と陛下は学園時代の友人でな」


「学園のかぁ…」


 また学園つながりだ。


「まあ陛下に会うくらい心臓に悪いけど別に大丈夫だよ?」


「まだ続きがあるんだよ」


「まだ何かあるの?」


「シオンが作った魔力封印の魔道具あるだろう?それを一つ作ってほしいらしいんだ」


 これは予想外だ。

 俺の年齢でここまで多い魔力を保有している人なんていないと思っていたからだ。


「俺くらいの体内魔力量を持ってる人がいるってこと?」


「ああ、第二王女殿下がそうらしいんだ」


「第二王女殿下が?やっぱり俺みたいに暴走したりしちゃう感じなの?」


「そうらしい。それで結構落ち込んでるらしくて、陛下もいろいろ探したらしくてな。ただなかなか方法が見つからなくて、そこで白羽の矢が立ったのがシオンだ」


 俺も急に魔術がうまく使えなくなって落ち込んだから気持ちがわかる。材料と時間さえあれば作れるので拒否する理由はない。何より自分と同じ境遇の第二王女殿下に同情する。


「材料さえ用意してくれれば作るよ。なんか親近感覚えるし」


「それは良かった。これから陛下に会いに行くから一緒に来てくれ」


「わかった」


 父の友人なので悪い人ではないと思うが、陛下はどんな為人をしているか考えながら王城へ向かった。





*****





「こちらでお待ちください」


 使用人が部屋まで案内してくれる。

 これから国王に会うのは私的な用事なのでわざわざ謁見の間を使う必要がない。


「陛下って呼んだほうが良いのかな?それとも国王陛下?」


「どっちでもいいと思うが…対面だったら陛下でいいんじゃないか?それにあいつはそんなこと気にしないからな」


「どんな人なの?」


「そうだなぁ…悪ガキかな?」


「わ、悪ガキ…?」


 予想斜め上の返答に驚愕する。

 さらに聞こうと思ったが――――――


「陛下が来られました」


 使用人の声に佇まいを正す。


 そしてドアを開けて入ってきたのは、


「いやいや、アレクとセリーすまないな。お、君がシオンだな今日の決闘は見事だった」


 金髪碧目の偉丈夫だった。


「お初にお目にかかります陛下。シオンと申します」


「うむ礼儀正しいな、アレクと大違いじゃないか」


「うるさいぞギル。でも確かにシオンは外見もセリーに似てるんだよな」


 父は国王であるギルベルトと学園在学中から仲が良かったこともあり、私的な場では愛称のギルと呼んでいる。

 ギルベルト陛下と父の掛け合いを見ていると、父が悪ガキと言っていたのはあながち間違いじゃないかもしれないと思った。


「そうなんですよギル。この前もシオンにドレスとか着せちゃったのよ」


 母のその唐突な爆弾発言を聞いて俺は遠い目をし、父とギルベルト陛下ははじめは驚き次第に俺に憐みの目を向ける。


「シオンあの時に疲れてたのはそういうことか……」


「やはり恐ろしいな……」


「何か言ったかしら?」


 母がにっこりと笑って二人に視線を向ける。笑っているはずなのに妙な迫力があるのは気のせいだろう。


「「な、何でもない」」


 少し焦ってギルベルト陛下は話を変える。


「ごほんっ!ここに来たということは了承してくれたのだと思うが今一度申し入れよう。シオンようちの娘のために魔道具を作ってほしい」


「承りました。自分と同じ境遇なら放っておけないですので」


 そうすると明らかにほっとしていた。それだけ心配していたのだろう。


「よかったなギル」


「ほんとだ、探し回っても体内魔力を封印する魔道具なんて無かったからな。これでシルフィーネにいい報告ができそうだ。というかどうやって作ったのだ?」


「素材自体はそこまで珍しいものじゃないです。一番時間がかかったのは新しい術式の開発ですね」


「そんなことを…ほんとに優秀だな…今後は魔道具の方面にも力を入れんとな」


 うちの国は他の国と比べて優秀な魔術師が多い。なので需要がない魔道具を作るような錬金術はあまり進んでいないのだ。


「材料は教えてくれればすぐに用意する。時間はどのくらいかかるのだ?」


「作るのは二回目なので丸一日あれば完成します。材料はAランクの魔石一つ、ミスリル、シルバーウルフの毛です」


「わかったすぐに用意させよう。Aランクの魔石はなんでもいいのか?」


「理論上はなんでも大丈夫ですね。第二王女殿下の好きな色の魔石でいいのではないでしょうか」


「あいわかった。因みにシオンのはなんの魔石を使っているのだ?綺麗な漆黒だが」


「俺のはブラックオーガですね。俺の銀髪に映えるので気に入ってます」


 ブラックオーガの魔石にしたのは完全に偶然だが、結果的に銀髪に漆黒のイヤリングは色が対照的なのでいい塩梅になっていると後々気が付いた。


「確かに似合っておる。では明日また王城に来てくれ。娘にも会わせたいからな」


「わかりました」


 こうして領地に帰る前にもう一仕事することになった。

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