第6話 初めての魔術

 シオンは自分の部屋に戻って早速本を読んでいた。

 

 始めに読んでいるのは『魔術の基本』という本だ。

 この本はその題名通り、魔術の基本が書かれている。


 ある程度読み進めて分かってきたことがあった。


 冒頭の辺りは魔術の起源などの歴史から始まり、そこから若干宗教染みた説明…、この辺りはあまり意味がないと思い斜め読みをする。


 しかし、読み進めていたら役に立つ情報が載っている箇所を見つけた。


 まず魔力とそれの元となる魔素というものがある。


 魔素は酸素や窒素のように空気中に存在しそれを吸収して自分の体内で魔力に変換するものだ。

 この際、自身の中で貯められる魔力の量——体内魔力量としておく―は人によって多い人もいれば少ない人もいる。


 体内魔力量は完全な先天性だが、体内魔力が枯渇するまで使い回復させるといったことを繰り返せばある程度までは増やすことが可能だ。


 しかし、それでも無限に増やすことはできない。

 いずれ上限に達し、それ以上は増やせなくなるからだ。


 次は魔術を行使するにおいての手順が書かれていた。


 まずは自分の体内魔力を感知することから始まる。


 人によってすぐ感知できる人もいれば何週間もかかってしまう人もいるといった具合に様々だ。


 こればかりはやってみなければわからないだろう。


 そして、体内魔力が感知出来たら自分の得意な属性の魔術を使う。

 ただ、この際、魔術を行使するためには起こしたい現象に対する理解と想像力イメージ、それに正確な詠唱が必要らしい。


 ほかにもいろいろ書いてあったが、魔術を使うのに必要性が感じられなかったから割愛した。


 次に読むのは『魔術と属性の関係性』という本だ。


 内容は、属性の仕組みだったり理論のようなものが書いてある。

 その中でも興味深かったのは、『属性は現象の前ではない現象の後だ』といった記述だ。


 少々分かりづらいが、先に様々な現象がありその現象を後から属性という区分によって種類分けしているということだと推測する。


 それが火、水、風、土、氷、雷、光、闇、無、といった九つの属性だ。

 大昔の古代ではこの九つの属性だけでなく、空間属性など他の属性もあったらしいが今はもう失われてしまったらしい。


 ここまで読んで魔術の使い方はある程度分かったので『詠唱一覧』という本を持って、家に隣接されてある訓練場に向かった。




***




 シオンは誰にも見つからないように訓練場まで来た。


 そっと訓練場の中を確認したが幸運にもまだ誰もいない。一応見つかりにくいところでやることにしようと考えてた。


 まず、体内魔力の感知から始めることにする。


 どうやろうか考えたが、漫画とかだと座禅などをして~みたいな感じだと思ったので、胡坐をかいて目をつぶって体内に意識を向けた。



 あれからどのくらい時間がたっただろうか。

 ようやくなんとなくだが自分の中に何かあるような感覚があった。


 そこから意識を逸らしたら水の泡になりそうなので、自分の中にあるものにずっと集中してる。


 また、それから時間が過ぎ、かなりはっきりと体内魔力を感知できるようになった。


 次はいよいよ魔術を使う時間だ。

 さっき持ち出した『詠唱一覧』という本を見る。

 初めて魔術を使うので、一番簡単なものから始めることにした。


 自分の一番得意な属性は氷属性なので、その属性の詠唱が書かれているところを見る。


 一番簡単な氷魔術は『氷塊アイスブロック』だ。魔術の名前通り、氷の塊を作り出すという単純な魔術だと書いてある。


 それを使ってみることにした。


 ついに魔術を使うので、とてつもなくワクワクしている。


 しっかりと体内魔力を指先に魔力を集めるように意識して、氷塊のイメージをする。


 この時、前世での知識の分子構造も一緒にイメージして詠唱をした。


 「『漂う霰よ。集いて体をなせ。―氷塊アイスブロック』」


 その瞬間、自分の指先にいびつな形をした氷塊が出現する。


「凄い…!できた!」


 魔術としてはまだまだ不完全なものだが、何よりも魔術を使えたという事実に凄い歓喜したので思わず声を出してしまう。

 

 それからシオンは他の魔術も試してみることにした。


 氷魔術の『氷塊アイスブロック』から始まり、『氷弾アイスバレット』や『氷矢アイスアロー』といった攻撃魔術まで発動できるようになった。


 他の属性の基本的な魔術は使えるようになったが、唯一火魔術と土魔術はまだ使えずにいる。

 それはシオンの素質が無いからだろう。


 しかし、水属性なら『水生成クリエイトウォーター』や『水弾ウォーターバレット』、風魔術なら『微風ブリーズ』や『風刃ウィンドブレイド』といったように簡単なものならある程度できるようになった。


 それから散々魔術を試して魔術に夢中で気づかなかったが、身体が少し怠くなっていることに気がつく。


 初めは驚いたが、これは本に書いてあったように体内魔力が少なくなっている症状だと思い出した。


 回復速度は人によるが、魔力を使わずに休んでいれば勝手に回復されるものらしい。


 体内魔力量が少なくなってしまったのと、昼食の時間に近づいてしまったので、シオンはこっそり家に戻って急いで昼食をとる。


 その後、自分の部屋で魔力が完全になくなるまで風魔術の『微風ブリーズ』を使い続けていたら、いつの間にか気を失ってしまっていた。


 因みに途中でリコが訪ねてきてベッドで気絶しているのを見て、昼寝していると勘違いしたことにほっとしたのは秘密だ。


 これでばれたら止められかねない。


 とりあえず毎日一回は体内魔力量を増やすために、寝る前に枯渇させようと決めて、シオンはその日は眠りについた。






―———————————————————————



各属性の魔術の詠唱を考えるのが面倒くさくて割愛しちゃいました。

ご了承お願いします。

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