第7話キャスター視点

 今思い出しても主様は不思議である。


 我々ゴブリン族は弱く、そして群れると厄介という認識の元。

 見つかればどんな種族でも餌扱いや邪魔者扱いだった。


 私が住んでいた村も人族達によって強襲され滅ぼされた。

 森の奥で静かに住んでいただけというのに。


 そもそもこの村や私の村のゴブリンは種族が違うのだ。

 グレースフル《 優しい》・ゴブリンというのが私達一族の種族名だ。


 私達一族の願いは静かに穏やかに暮らせれば良いというだけだったのに。


 そんな人族への恐怖を植え付けられた私を見つけた主様は


「んー?火出せる?とりあえず魚食う?」


 呑気にそんな質問を魚を手にしてくれたのだ。

 何て優しい人なのだろうか!?と感激したがすぐに主様は眉尻を下げて顔が曇ったのです。


「まぁ、火を起こせないから生だけどね?」


 悲しそうに言うので私はすぐに魔法で火を起こしたら今度は主様が大喜びした。



 更には『キャスター』と名前まで頂き大変名誉な事だった。

 近くにある村を拠点としようとするとどこかの他の種族のゴブリンが統治していた。


 あぁ……何と情けない。

 私は一瞬で倒すとゴブリン達は咽び泣いていた。

 私? 私は既にキャスターですから!えっへん!


 グレースフル・ゴブリン族の生活は主様の一声により毎日が楽しく毎日が暮らしやすくなる楽しい日々だった。

 キャスターと何度も呼ばれ心震わせていると私は何と!鬼人族に進化した。



 そんなある日……朝ごはん用の獲物の罠を回収に向かっていると


「なっ!?主の魔力が消えた!?」



 私は一生懸命に探したが主痕跡は無かった。

 主と私のテントの中には不思議な魔力が漂っていた。


 床を見ると少し焼け焦げている。


「くそっ!転移魔法陣か!どこに行ったのかも分からなきゃなんの意味もない。

主様~」



 私の敬愛する主様が消えてしまった事に絶望を感じたが……


 目を瞑ると微かに主様との繋がりを感じる。



 私はテントから出て風魔法を使う。


『主様が転移魔法により消えてしまわれた。

 これより精鋭を集めて主様の捜索に向かう。

 そして私はここに宣言する!主様に何かあったらこの世界全てを敵に回す』


 一瞬の間を得て、村のゴブリン達や上位進化した個体達の顔が絶望から怒りに変わる。

 そしてその感情を抑えきれずに咆哮をあげた。


『『『『ヴォォォォォォ!!!』』』』


 その瞬間、我ら一族の魔力が怒りと悲しみと絶望に共鳴し村のグレースフル・ゴブリンが進化した。


 総勢300体の鬼として。


『あぁ情けない。主様にお仕えしていたのに私めキャスターは主様のお名前を存じ上げないなんて……


絶対に見つけてみせます!』





ーー2ヶ月後


 ある日突然、小国のアナスイ王国の王都は大パニックになる。


 上位魔人の鬼がゴブリンを引き連れ王都外周に集まったのだ。



 全国民が恐怖に包まれている中その声が聞こえて来た。


『えー私はキャスターと申します。

主様をさがしているのですがこの国にいらっしゃいましたら反応ください。


 え、えぇ。えぇこちらに害意はございませんが攻撃してくれば応戦しますので悪しからず』


 アナスイ王国は『主様』を探しているだけのキャスター達に


「へん!たかがゴブリンが調子に乗るなよ!我が名は第3王子タカラ・アナスイ!この国の中には絶対に踏み込ませんぞ?かかれー!!」



 その愚かなる行動の代償はたった1時間でアナスイ王国は事実上滅びた。


『さて、戦闘員や王族貴族の大人の男だけを殺したのには理由がございます。


 避難する先でキャスターが主様を探していますと行く先々で広めて頂けると幸いです。


 外に行ってくれる方にはこちらからお金と食料を差し上げたいと思います』



 後にキャスターの行動は


移動災害ディザスター百鬼夜行デーモンパレードと呼ばれた。



 主が同じ大陸には居ないとは知らずに永遠に歩き続けたのだ。

 褒めてもらう為に。


だから今日も私は元気よく


『主様〜〜キャスターめが絶対に見つけに行きますから』

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