第6話

 スースーして寒いな? と意識が覚醒し始める。



「んぅ?キャスター?寒いぞ?」


 返事が無く、俺は周りを見渡すと


「oh......ジーザス」


 周りの風景を見渡すと何故か森だった……

 ゴブリンが居た森とは植生が違う、一気に目が覚めた。


 夢でクソジジイが目の前に現れたからぶん殴ってやって爽快感バッチリで起きたのにぃぃ。


「もしや?あれは現実で、これは嫌がらせか?

 ぐぬぬ、折角人は居らずとも快適な暮らしが出来てたのに。

 何て器の狭い神なのだろうか?」


 こうしてはいけないと思い、俺は樹に登ろうと思ったが目の前の草原の奥にファンタジー世界のあれが見えた。


 あれって何だよ?って街を囲むあれだよあれ。

 あれリーマン参上!!


 シュワッチっとポーズを決めて遊んでる場合じゃなかった。

 俺は周りを見たら今度は武器も無かった。


「いじめ過ぎじゃね?どこかの骸骨騎士や墳墓に居る骨さんとかゴッテゴテの装備がーとか無いんかね?

 こちとら棍棒でゴブリン倒して逃げ回ってんのに」


 ん?この2ヶ月戦闘してない気が……いやいやそんな筈……

 キャスターが優秀過ぎたのがいけないんだ!


 グータラ主夫してたけど何か?


 目視確認で大体20kmと判断、そして俺の歩行速度が毎時4.5~5km

 うむ、4時間から疲労から来る休憩を挟むとして多めに見て5時間か。


 昼過ぎには着きたいなぁ。


 遠くの街道では皆ハッスルしてた。

 え?俺か?当たり前だのクラッカーで草原の中を歩いてるよ?


「ひぃぃお助けを~」ってボロボロの髭面のおっさんが懇願してるの聞いて厄介事判断したまでだ。


 美少女ならまだしもおっさんやぞ?おっさん。

 助けたフラグで髭面のヒロインとか勘弁して欲しい。


 フローラルな香りじゃなくてボロボロだからドブと加齢臭の臭いとか来たら泣くわ。


 不思議な事もあるもんだなぁ。


 え?何のことかだって?

 さっきから……あ!また来た。


「グギャギャ!!グギャーギャ!」


 何だこれ?さっきから出会うゴブリンが俺を見て一礼して去っていくんだよ。


 あれ? 俺冒険者になれなくね? まぁならなくても生きては行けるか。


 手ぶらで歩いていたら最初に出会ったゴブリンが戻って来て剣と短剣をくれた。


「あ、ありがとう。助かったよ」


 そう言うと嬉しそうに去っていくんだよ……

 だから何でだよ!?


 何かマーキングでも着けられてるのか?俺は。


 朝日から炎天下の日差しに変わるも俺はまだまだ歩いていた。

 短剣には何か青い石が着いて居たので握ってみたら水が出た。


「水筒は確保っと、あのゴブリン頭良かったんだなぁ」


 そういや俺、この世界に来て最初の数体以外魔物倒してないなぁ何て思いつつも気にせず歩くのだが。

 そして一向に街に近付いてる気がしないのは何故だろうな。




 空か茜色に染まる頃、ようやく俺は街にたどり着いたんだけど


「あ!金無し、身分証なしじゃ街入れないんじゃね?」


 結局俺は最初から街に入れないクソ野郎という事だ。

 列に並んで居たが外れて近くにあった樹の上に登り眠る事にした。

金がねぇとか叫んでちょっと恥ずかしかったわ。


「参ったねぇ~」


 夜になると素晴らしい奴らが近くに来てくれた。


『グギャギャグギャギャ』の大斉唱だよ。


 俺は足元を見ると袋が山積みになっていた。


 樹から降りると少し大きめのゴブリンが膝を着き袋を手に置き差し出してきた。



「マジか……有能すぎて笑える。ありがとう」


 物凄く物欲しそうなキラキラした目で俺を見つめるゴブリン。

 あー……これあれだ。キャスターに名前を着けて呼んでた時に周りのゴブリン達も同じ顔してたな。

キャスターって呼ぶ度にキラキラした顔で俺を見つめるんだよなぁ。


「褒美にお前には名をやろう。剛力だ!」


 何故なんだろうか?この時だけは俺の言葉が伝わってる気がするんだよなぁ。


 剛力はきっちりとアドミナル・アンド・サイのポージングをして群れを引き連れ帰って行った。


 サイドチェストは有名なアニメのゴブリンロードがしてるから被りたく無かったのかな?

 いやそれは俺の願望を受け取ったのかもな。



 俺は1番大きな袋を開けるとその中に小さな袋の中身を『ジャラジャラ』と音を立てて纏めていき


 最後の1つだけはサップ用に残した。

 唯一の扱いやすい武器だからなあ。


 俺はそのまま仮眠を取るのであった。

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