第5話とある主神の憂鬱

 髭の長い老人は大きな水晶の前で呆然としていた。


 自分が保護、最重要対象に選んでいた蹴人少年が自ら命を断ったのだ。


 おかしいと履歴を見直すとさらに呆然とする羽目になる。


 それは1度運命改変が行われ1人のとあるの存在が消えていたのだ。


『何じゃ?これは?』


 使用履歴を見ると自分の眷属神の最下級の蹴人少年の監視役であった。


 名前もまだない木っ端神、自分から見れば赤ちゃんの様な存在だった。


 嫌な予感を覚えた為、水晶に更に力を込めて過去を見た。



『……なぁ!?あやつ儂の姿を使って最重要関係者を追放じゃと?


 おい!あの覗き魔を連れてこい!』


 そばに控えていた眷属神はフッと消えると1人の少女の首根っこを掴んで戻ってきた。


『お主、蹴人を死なせたな?

 そして最重要関係者の存在すら消したな?


 どこに送ったのじゃ!?答えよ!』


 主神に対して覗き魔呼ばれていた少女は鼻で笑った。


『蹴人はアイツに虐められてたのよ!規則に則って一応は異世界に飛ばしてやったわ?

なにか?悪いのかしら?』


 主神はため息しか出なかった。


『覗き魔よ、お主はいつから未来を見通せる様になったんじゃ?


 蹴人とあの子は喧嘩によりあの子は刺されても奇跡的に生き残り、強固な絆が芽生えてこれから世界を救う人材になった筈じゃったんじゃ。


 それにあの子は蹴人に必要以上にイジメが向かない様に常に気を配っておったのじゃ。

お主が余計なことをしたせいで2人共世界から消えたがの?』


少女は目を見開き濁った目で儂を罵倒しようとした。


『う、嘘よ!あんなやつ『消えよ、永遠に』い、いやぁぁぁ』


 くだらない言い訳など聞きたくないと少女を消滅させた。



『スマンの、掃除は任せた。

勝手に人を送ったのじゃお詫びをしなきゃならんの』


 そう伝え、異世界の神に出会う為に主神は次元を超えるのであった。




 地球の主神は次元を超えた先でため息を吐く。


 目の前にいるのは覗き魔が追放した子が居る世界の主神なのだが……


 ベッドの上で腹を出して『ンゴーンゴー』と女神が出してはイメージダウンする様な鼾もとい寝息を立てていた。



 女神の眷属神がすぐ様現れ膝をつくのを手で制する。


『地球の主神様お久しぶりでございます。

本日はどの様なご要件でしょうか?』


『ふむ、下級神が勝手にこちらの世界に儂の世界から1人人を送ってしまったのじゃ』



 眷属神は顎に手を置き


『なるほど、それはそれは緊急事態ですね。


 起きてください、女神様?めーがーみーさーまー!

 起きろって言ってんだろうがぁババァ!』


 最初は優しく起こしてたのに、最後は何という暴言だろうかと呆れていると


 布団を剥ぎ取られた女神が起きた。


『あらやだわ。地球の主神じゃない?

乙女の寝室に勝手に入ってくるなんてえっちね?』


『ンゴーンゴー鼾かいてるお主に言われとうないわっ!』


 ズゴーンッとショックを受けた女神に儂は説明を眷属神に任せた。



 女神は水晶を取り出し、いきなり慌てた様に力を使った……後に


『あ!やべっミスった……まっ!いっか!』


『『良くねーよ?見逃さねぇぞ?』』


 儂とここの眷属神は気が合いそうじゃな?


『んだってぇ、彼ユニークゴブリンの村のど真ん中に居たのよ?

焦って適当に人族の街がある近くの森に転移させちゃったわ。


 それにしてもどんだけ貴方の下級神クズなの?

 魔境……半径1000km圏内に人族が居ない危険な森に彼居たわよ?』


 儂は心をここで決めた!

よし!謝罪して加護を渡そうと。



『儂謝罪する。土下座して分かってもらうしかあるまい。

手伝ってくれんかのう?』


『えぇ、勿論よ!』


 女神は軽く返答し


『では精神だけ引っ張りましょう!』


 仕事の出来る眷属神は既に準備に入っていた。



 魔法陣が現れ1人の青年が現れる。

 儂はその青年に近づき……



『この度は儂の世界のかきゅ、「てんめぇぇぇ!!ここで会ったが100年目!クソジジイがくらぇぇぇ」ブヘェェェェ』


 儂いきなりぶん殴られたよ……そして3回転半回った瞬間に女神と眷属神は青年を送り返してしまった。



儂は膝を着き


『謝罪すら出来んのじゃがぁぁぁぁ』


落ち込むのであった。

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