第3話   さらなる不幸

読み終わると、俺の目から水が溢れ出した。

それが、悲しいからか寂しいからかなのかもわからなかった。ただ、1つだけわかることがある。


俺は彼女に感謝している。


彼女は俺が何をして欲しいのか、具体的には、適当な慰めをしないなど、なるべく配慮してくれているのを感じていた。「恋愛強者」という名の翼を失ってしまったのは、痛い。

彼女は俺の心の空いてしまった部分を少し埋めていてくれたからだ。

ただ、俺はめげない。彼女は最後にこれからについても教えてくれた。


 『ありがとうございました。』


とだけ送った。

もう一度読み直すとおかしな部分に気が付いた。これで最後だと言っているにも関わらず、『また今度。』と書いているのだ。だが、特に気にしなかった。


その後、ベッドに横たわったり、椅子に座って、立ってを繰り返していたが、「例のあの人」にメールを送った。


 「体調良くなったんだけど、明日空いてる?」


俺の翼の意見をしっかりと活かして送った。

しばらくして返信がくる。


 「よかった。体調良くなって。でも、ごめん。明日予定入れちゃった。」

 「そう、それならいいや。また今度。」


そう送ってスマホを閉じる。明日、優花に会わなくてよいのが少し気を楽にした。

体調が良くなったことを報告したので、優花がお見舞いにも来ないことを確信して、ご飯を食べた。吐かないことに満足する。何に満足しているのやら。

その後、家の中で動画を見たり、ゴロゴロして、時間を潰している内に深い眠りについた。



ー翌日ー


 朝になった。鳥の鳴き声で目を覚ますというわけでもなく、習慣で起きる。いつもと違ったのは、起きると同時に嫌なことをおもいだす。嫌な気持ちの中、腹がなる。


 「お腹、すいたな。」


のっそり起き出し、パンを焼いて食べる。マーガリンを塗っただけだが、十分すぎるほどうまい。いつか、誰かが人間一番大切なのは健康だと言っていたのを思い出す。美味しかったけれど、頭はモヤモヤしていた。


頭のモヤモヤをはらうために昼ごろ、本屋に立ち読みでもしに行こうかと思い、外に出て歩いていると、出会ってしまった。いや、正確には見てしまった。


やつらを…


そう奴らを…


浮気中のお二人さんを。


奴らは敵は、手を繋いで歩いていた。めちゃくちゃ甘々な雰囲気が漂っていた。何を話しているのかまでは聞こえないが、少なくとも楽しそうであった。


なんで、こんな場面にぶち当たる運があるのだろうか。

俺はこの瞬間、ミクロソフト社のヒルケイツ氏の言葉を思い出した。

「人生は皆平等ではない。そのことを理解しよう。」


呼吸が荒くなる。


そこで、俺はこれはチャンスだと考えようとした、奴らの浮気の証拠を集められると。

奴らの後を尾けた。

最初に奴らはゲームセンターに入って行った。流石に、中に入るのはリスクがあるので、正面にあるカフェに入る。結局、どちらにせよリスクはあるがこうすると探偵っぽくなる。

コーヒーを頼み、飲んで待っていた。いらつきはしたが、気持ち悪くはなかった、まだ。

奴らが出てくると同時に俺も会計に向かい、後を尾けた。


その後、奴らは色々な店を覗きながら公園に入っていった。

そして、人のいない茂みに入って行くと


キスをし始めていた。

それも、ディープキスを。

よだれが線を引く。優花の目がトロけて、上気していた。


俺はそれを見て固まるなんてものじゃなかった。本当に衝撃を受けたのだ。吐き気、涙は敵の前では堪えた。


その後、奴らは多目的トイレへ…


おそろしかった、これ以上踏み込むのは。頭の中では彼らが何をおっぱじめようとしているのかはわかっていた。でも、体は止まらなかった。奴らが入った多目的トイレに耳を当てた。


しばらく音が聞こえなかったため、安堵していた。ただ、やはり現状は無情であった。


優花の嬌声が聞こえてきた。


ー目の前が真っ暗になったー


その後、家に気づいたら家にいた。


吐いた。吐いた。とりあえず、吐いた。これがもはや義務であった。


そして、俺は残った体力で一縷の光の筋に賭けた。

そう、ヤッホー掲示板である。


 『彼女はNTRされていました。多目的トイレでやっている場面に出くわしました。彼女の初めては親友に奪われていました。』


そう送るのが精一杯であった。

恋愛強者である俺の翼から返信が帰ってくれば生きられたが、返ってこなかった。

終わった。そう思ってベッドに倒れ込んだ。



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