第43話 自手精至

 「自手精至みずからてづからくわしくいたり」道元禅師の典座教訓の中にある。典座(寺院の食事を作る担当者)は自ら自分の手、身体を使って細かいところに至るまで気を配って食事の準備をした。

 結局のところ人間の価値というのは、今この瞬間に自らの身心を使って細かい所隅々にまで気を配り行動しているかどうかにかかっている。それ以外に人間の価値を測る基準はない。

 言葉で言うのは簡単だ。しかし多種多様な状況、多種多様な立場・考えの人間たち、利害の衝突、善人悪人入り乱れ、魑魅魍魎の世界と言っても過言ではない現実世界の中で生きるのは容易ではない。

 こうすりゃ成功するなんてものがある訳がない。できるのは「自手精至」のみだ。

 そして坐禅した身心は大宇宙の真実・真理を実現・実証するから誤ることはない。坐禅した身心で自手精至する。これ以外に何ができようか。

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