第42話 底辺

 「底辺の仕事」で世の中騒いでる。

 けど一流企業で給料がいいとか、芸でも事業でも金を稼いでる人を持ち上げてほめそやかしてるのに、急に真面目な顔して「底辺とはけしからん」なんて批判したりしてる。空々しいし虚しい。

 どう生きるかはその人個人の問題でしかない。他人が口出しするものではない。逆に他人がどう言おうが、世間がどう見ようが、本人が自分の生き方としてこれでいいというならそれでいい。それだけのことだ。

 世の中色んな人間がいて色々なことをして社会が成り立っている。色んな人間がいないと社会は成り立たないし、似たような人間ばかりの集団はリスクが高いし、気味が悪い。不自然だ。不自然なものは滅ぶ。

 1つの会社でも様々な仕事がある。それではじめて組織が成り立つ。

 僕はどういう訳か厄介な仕事の責任者にされることが多かった。厄介な仕事というのは、失敗したらとんでもないことになる、成功しても「こうなって当然」と言われる仕事という意味。失敗して大きく傷つくか、うまくやっても大して評価されない。けれど放ってはおけないから誰かがやらざるを得ない。

 僕は大して出世もしなかったけれど、自分としてはやれることはやったと思っていて特にどうこう思う所はない。

 組織というのはかっこよく企画を出す人と、出された企画を現実の中で泥まみれ汗まみれになって実現する人に分かれてるように感じる。僕は後者だった。どちらも必要。ただそれだけのことだ。

 

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