第17話 文化祭の買い出し


 時刻は8時45分。

 待ち合わせの駅前にやって来た。


 改札の前を見れば見慣れた金髪少女の姿。


 ネットには、女の子より待ち合わせ場所に早く来るのがマナーと書かれていた。

 余裕を持って待ち合わせ場所に望んだが、どうやら遅かったようだ。


 俺は足早に少女の元に駆け寄った。


「ごめん心。待たせちゃったか?」


「私も今来たばかりよ。それにまだ待ち合わせの15分前だし、謝る必要はないわ」


 彼女はあっけらかんと答えた。

 よくよく彼女を見れば、学校の時と比べ雰囲気が違う。


「心その服似合ってるな。すごく可愛いと思うぞ」


 俺は素直な感想で彼女を褒めた。


「え...?そ、そう?ちょっと新しい服を買ったから着てみたのよ。気に入って貰えたならその、良かったわ」


 彼女の顔は何だか赤いような気がした。

 暑い中待たせてしまったからだろうか?


「...大来帰もその服似合ってるわよ。すごく良いと思うわ」


「ありがとな」


 彼女は俺の服装も褒めてくれた。

 巡井さんに選んで貰った服であり、俺自身も気に入っているので素直に嬉しかった。


「それじゃ、ちょっと早いけど行きましょうか」


「そうだな」



 ****


 ショッピングモール内のベンチ。

 飾りつけの道具を買い終え一休み中。


「結構買ったな。他に必要な物ってあったっけ?」


「特にないわね。これで欲しい物は揃ったと思うわ」


 俺は腕時計を確認する。

 時刻は10時30分。

 思ったよりも早く買い物が終わったようだ。


「大丈夫そうだな。まだ11時前だしどこか行きたい所とかある?」


「そうね...」


 彼女はふとエレベーターの近くに貼り付けられている映画の広告を見た。

 最近流行っている恋愛物の映画のようだった。


「映画でも見に行く?ここの4階がシアターになってたよね」


「いいの?ちょっとこの広告の映画気になってたのよね」


「うん。俺も気になってたんだ。時間もあるし行ってみようよ」


 俺達は飾りつけの道具をコインロッカーにしまい、4階のシアターへと向かった。



 10時50分からの上映で席を取ることが出来た。

 前過ぎず後ろ過ぎず、真ん中のちょうど見やすい座席だった。


 俺の右隣の席に心が座っていた。

 彼女は相当この映画が気になっていたらしく、目を輝かせて始まるのを待っていた。


 そして映画が始まる。


 内容は不運な目に合う主人公を、未来からやって来たヒロインが助けるというタイムリープものだった。

 何度も何度も死んでしまう主人公を諦めずに助けるヒロインに感情移入し、中々に見応えがある。

 しかし、主人公がそんなヒロインに対して鈍感であり、もどかしさを感じた。

 最終的にはハッピーエンドで締め括られ、エンドロールが流れ始めた。

 隣を見れば涙を流す心の姿があり、俺はエンドロールが終わるまで前だけを見続けた。


 エンドロールも終わり、退場する人達も増え始める。

 俺は心のすすり声が治まったのを確認し席を立つ。


「そろそろ行くか」


「えぇ...」


 俺たちはシアターを後にした。




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