第4話 ストーカー少女との邂逅2

 


 頭を強く殴られた様に錯覚した俺は、何とか意識を取り戻す。


「ごめん。ちょっと頭の中を整理させて」


「はい」


 混乱した頭を無理やり回転させる。


 好きって何だ?

 付き合うって何だ?

 何でいきなり告白されたんだ?

 何で俺の名前を知ってるんだ?


 同じクラスではないよな。

 同じ学校っぽいし、名前を知ってても不思議じゃないのか?


 そもそも俺はこの子の名前を知らない。


「スーッ、ごめん、先ず名前を教えて貰ってもいい?」


巡井翔鈴めぐるいかれんです!」


 彼女の名前は巡井さんと言うらしい。

 聞いたことのない名前であった。

 面識はないだろう。


「巡井さんは俺と同じ高校の生徒だよね?」


「はい。2年C組ですね」


 同じ学年だとは知らなかった。

 C組だと教室の階も違うし、合同授業もない。見かけたこともなかったな。


「巡井さんと俺は初めましてだよね?」


「...多分。そういう事になってます」


 多分ってなんだよ、多分って。


「あー...そうだよね。じゃあ、何で俺の事好きなの?」


 一目惚れとか?


「愛を誓い合った仲なのに...」


 えええぇ!記憶にないよ。こんな子。

 そもそも俺に彼女いたことないし、許嫁もいないよね?...もしかして、荒れてた時に何かやっちゃったのかな?


「いや、ないないないない!」


「?」


 ないはず!


「巡井さんが俺の事を好きなのは分かった。じゃあ何で俺の事をつけてたの?」


 もしかして告白するためにつけてたのかな?


「大来帰君を守るためです!」


「守る?」


「はい」


「な、何から?」


「この世の全てからです!」


「はい?」


「任せてください!大来帰君は私が守ります」


 えぇー...頭が痛くなってきた...。


「分かんないけど、分かった。」


 まとめると、巡井さんは俺の事が好き。

 好きだから俺を守りたい。

 俺を守るためにストーキングしてた。

 うん、わからない。もしかすると、最近の通り魔事件を心配してくれたのか?


 う~ん、ありがたいけどなんだろなぁ


「でも巡井さんがやってる事ってストーカーだよね?」


「......~♪」


 目を反らして口笛吹き始めたぞ!巡井さん誤魔化すの下手すぎだろ。


「申し訳ないけど、巡井さんの事よく知らないし、付き合うのはちょっと無理かな。後、尾行されるのはちょっと迷惑というか...止めて欲しい」


 本当はちょっと楽しんでたけど。


 口笛を止め、こちらを見つける彼女は次第に顔が青くなってゆき...


「ごめんなさい!私は大来帰君を助けたかっただけなの!迷惑をかける気なんて......なかった!ごめんなさい...」


 彼女は本当に申し訳なさそうに頭を下げた。


 うーん。巡井さんは俺の事を思って行動してたみたいだしな。悪気は無さそうだしなぁ。どうするかな?


「分かった。巡井さんも俺を思っての行動みたいだったし、今回は許すよ」


 だんだんと巡井さんの顔が明るくなる。


「でももうストーカーみたいな事はしないでね?」


「......」


 アヒル口で惚けやがった!本当に大丈夫か?


「しないでね!?」


 一応念を押しておく。


「ストーカーはしません」


 うんうん、分かってくれたみたいで良かった。

 しかし、俺の事を好きな子がいたなんて、それに見た目は美少女だし。

 ストーカー何てしないで、話しかけてくれれば良かったのにな。あー...でもあの噂のせいで話しかけずらかったのかな? それなら俺にも非はあるのか?


「そのー...。こんな事を言える立場じゃないかもですけど...」


 巡井さんが口を開く。


「お友達になってくれませんか?」


「あー、友達くらいならいいよ」


 出会いは最悪だったけど、悪気はなさそうだしな。勝手にストーキングされるよりはましだ。

 それに友達ならウェルカムだ。


「やった!ありがとうございます♪」


 巡井さんは嬉しそうに笑顔で答えた。


「うん。よろしく」


「ついでに連絡先交換して貰っても良いですか?」


「いいよ」


 巡井さんと連絡を交換する。友達の連絡先追加!連絡先くらいなら大丈夫だよな?


「ありがとうございます!ついでなんですけど...」


「ん?」


「同棲しませんか?」


「うん、ダメに決まってるよね」


「あははー。ですよね~」


 距離感バグってんなこの子。


 本当に友達になって良かったのか? と今さらながら後悔する。


 まぁストーカーの件も解決して、スッキリはしたかな。そう思うことにしよう。こうして笑顔の巡井さんと別れた俺は、家に帰るのであった。



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