第8話 ヒロイン獲得フラグ
どうしてこうなった。
いや、わかってるよ? 女神なんぞが出てきた時点で、巻き込まれ体質なのは自覚してるし、転生後も色々あったから。
きっと退屈しない人生なんだろうとは予想してたし、のんびりスローライフを送るのは無理だって。
ここに来てから色々とお世話になってたリリアンナさんを、やむを得ない事情で魅了してしまった。
その計画性のなさが、今の状況に繋がっているのも分かってる。
ハーフエルフという微妙な立ち位置の彼女を、シーナさんは庇護してくれると約束してくれた。
その一環として、ダークエルフの里に同行することに仕事として請け負った。これはリリアンナさんのたっての願いでもあった。
詳しいことは知らない。が、エルフの庇護下で自由を保障される絶好の機会だというのはわかった。
だから、危険かもしれないとは聞いていたけど、他の娘たちの後押しもあって、迷うことなく飛び込んだつもりだった。
「六時方向、第五波! 備えっ!」
依頼主の貴婦人が吼える。
もう何度目だろう。
馬みたいな化け物から始まり、
スライムのような水性の化け物にメイドの人が凌辱されかけたり、
グリフォンとキマイラの喧嘩に巻き込まれて、キャンプが勝手にキャンプファイヤー(火事)にバージョンアップしたり、
不可視の存在に四六時中張り付かれても抵抗してはいけないと言われて、昼夜問わず集中力を削がれ続けたり、
地竜との遭遇で来た道を引き返して、キャンプファイヤー跡地に戻ってきたり、
なんか想像していた護衛とまるで違う展開に、吐きそう。超吐きそう。
「……(メイドの人がお色気ハプニングで脱げた時には、いつもの流れが来たと思ったのに)」
背の高い木に意気揚々と上ったはいいが降りられなくなった子猫の気分。
「ムリゲー過ぎる……」
回復もままならないまま、今までの集大成と言わんばかり、多種多様な化け物に囲まれている。
突破する妙案もないまま、消耗戦を強いられてる。
「考えが甘かった……」
異能でメキメキ力をつけて、冒険者ギルドでも一目置かれる存在になりつつあったけど、逆に言えば、まだ人間の領域なのだ。
生き残れる気がしない。むしろ、まるで覇気に衰えがない貴婦人が頼もしいを通り越してそら恐ろしい。
――きゃぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!
どれ位経っただろう。事態の急変を報せるように、何処から悲鳴が轟いた。
仲間じゃない。声からして女の子だ!
こんな生活してると、謎の確信をしてしまう。たぶんかわいい女の子だ。
「アオイ、貴方が様子を見てきてください。突破口を開きます」
依頼主に促され、言われるがままに悲鳴の聞こえた方に足を向ける。
なんなとなく、彼女は見捨てたりはしないだろうと思っていたので、とくに違和感に気づけないまま、オレはまた新たなヒロインと出会うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます