15話-寝顔

-16時- -001120波- -有-


「おいおい、2本目もぶん投げていいのかよ」

「終わらせるって言ったはずだ!」


刃先をばれないように服の袖の中に隠しつつ持つ。よしよし、刃は私の肉をじりじりと切り分けながら刀身へ戻ろうとしている。これならやってみる価値はあるかもしれない。


とりあえず仕掛けるが、ランドットは不自然に動いていない。

ランドットとの距離は残りわずか。必ず何か仕掛けてくる。


「上ががら空きだぞ」


来た。

咄嗟に上を見る。が、


「何も...ない」


嵌められた。


「食われて死ぬんだな」


どこから来る?下、横、それとも後ろか。

ランドットのつまらなさそうな瞳に映ったのは、私と私の背後で口を開ける魔物。

後ろか。

身体を後ろへ向き直り、隠し持っていた刃先を背後の魔物へ向かって全力で投擲。


「よし」


魔物は顔を貫かれて倒れる。思わず片膝に手をついてしまう。


後ろで地を蹴る音が聞こえる。確かにいつもの私なら抵抗できずにやられるしかなかった。でも、私は強くならなければいけない。


『殺す 瑠璃以外は全て』


「それじゃあ――」


「なっ...」


刃先がランドットの攻撃を弾く。弾く音は右から。

一瞬の隙さえできればこちらのものだ。


『殺す』


右足をランドットへ向けて、振り向きざまに右腕を狙って剣を振り上げる。

よし、ランドットの右腕を綺麗に切断できた。


「グゥゥ...クッ、やるじゃん」

「どうも。近づいたのが仇になったね」

「直接止めを刺さないと安心できないんでね」

「降参する?」

「はぁ...するよ。片腕ぶった切られたんじゃあ勝てんだろうな」


良かった。あとはランドットの腕を止血しないと。


「腕出して。止血しないと」

「いらんいらん。電脳空間は血が流れないんだよ」

「え?」


ランドットの切断した腕を見る。


「本当だ...」


でも血の代わりに小さい何かが漏れ出してる。


「ん?気になんのか?これ」

「うん」

「簡単に言えば、データが破損してるのを表現する為のパーティクルだ」

「一言で」

「血の代わり」


なるほどね


「ようやく分かった」

「はぁ...こんなんに読み負けたのか...」

「私はルレを守る為に強くならなきゃいけないからね」

「誰かを守る為、ねぇ」


もう力が入らない。ルレちゃんの所に  もど  r


「おい女、おーい寝るのかー?」

「おま  え  も―――」


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-17時- -001020波- -有-


「ゼ...ん」

「...ちゃーん!」


うーん天使の声が聞こえる。


「...、こしは...れ」


うーん?


「ゼタちゃーん!」

「んあ」

「ゼタちゃんおはよー!」

「アガッ」


??????状況が呑み込めない??????


「おはよう、ルレ」


まぁとりあえずおはようと言う。ルレちゃんの後ろでガブエイラとランドットが私を見つめている。何だこの状況。


「よく眠れた?」

「うん」


え?いつの間に寝てたの?て言うかルレちゃんにずっと寝ている所見られてた?

恥ずかしいんだけど!!待って待って待って、え?ちょっと待って。え?


「ゼンタさん、今日は帰って休みましょう。明日報酬を渡します。ログアウトと言えば元の世界に戻れますよ。では。」

「じゃーな、ゼタちゃん」


ランドットにゼタちゃんって言われたくないんだけど!

怒る気力もないし睨むだけにした。


「ごめんね、少ししか魔法使えなくって」

「全然良いよ。ルレの魔法のおかげで勝てたんだから」


私ちゃんと話せてるかな?


「私もゼタちゃんみたいに戦えるように頑張るね」

「そんなこと、しなくていい」

「でも――」


あああああ天使が今にも泣きそうな顔してる。どうしようどうしたらいいんだ?


「ルレちゃん自分が思ってるよりも凄い事してるし、私の力になってるんだよ」

「え?」

「だって、旅を始めてからずっと勉強してるじゃん。どんどん新しい魔法覚えて、自分がどうすればいいか考えて、中々できないよ」


ランドットと戦って分かった。私は白いヤツから貰った力で暴れていただけだった。何も考えずに。


「私はね、ルレちゃん。ルレちゃんを守る為に剣を取ったの。ルレちゃんの笑顔が大好きだから憲兵になろうとしてるし、戦う勇気が出る」


あたままわんない。


「魔法に勇気に笑顔に、沢山貰ってるからさ。ちょっと危ない事くらい任せてよ。私達は小さい時からずっと一緒、一心同体でしょ」

「――うん!」

「勝手に前出たら拗ねちゃうぞー」


ルレちゃんの両頬をむぎゅーっと押す。わぁ、ぷにぷにだぁ。


「ふふっ、ありがとう。ゼタちゃん」


ルレちゃんが笑顔になった。良かった~。


私は安堵した。












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神との契約ー奪い去る剣 フリドール @F_Re_Doll

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