14話-ランドット

-15時- -001030波- -有-


「ランドット、依頼に従って捕える」

「阿呆、誰が捕まるか。じゃあな」


ん?背中を突っつかれた感覚。

振り返るとそこには槍。ルレちゃんの魔法が無かったらやられてた。


「残念」


全力で踏み込み間合いを詰める。さっきの一撃が死角からの攻撃だから、見えないところからの攻撃を予想したほうが良いかもしれない。


「化け物の使いは化け物って事ね」

「殺しはしない」


身体を捻り全力の蹴り。


「甘いわ、殺す気が無いやつに負けるか」


ランドットの姿が突然遠くなった。この人速い。


「オラ」


目の前に突然現れる短剣。


コツン――


額に石が当たる感覚がして短剣が落ちる。


「はぁ...前も後ろも固いんか。面倒やな」

「それなら諦めて投降して」

「面倒なだけで敵でもないわ」


突如足元が無くなる。落とし穴か。


『ドットコード:カッセン』


私の上から巨大な物体が降ってくる。魔法か。


「そのまま電脳の底に落ちろ」


落ちる訳にはいかない。


「ハァァ...ァァァアア!!!」


無を掴み、落とし穴に蓋をされる前に抜け出す。

危ない、どうやったら一発入れることが出来るんだろう。さっきから対処するので精一杯だ。


「さっきから防戦一方だけど余裕無いんじゃないの?」

「お前の攻撃が聞かないことを証明してるだけだ」

「口調が荒いよ?誤魔化すのが下手だねぇ」

「そんなことを言う暇があったら次の手でも考えたら」


再び全力で踏み込む。


「はっや――」


恐らく同じ手は使ってこない。まずはランドットの後ろまで駆け抜けて次で決める。


「よっ」


グゥ...!!

地面がいきなり私に向かって熱い抱擁を交わそうとしてくる。地面を隆起させたか。

空に打ち上げられた。だけど無を掴めば。


『ドットコード:トレイルシャフ』

『ドットコード:セレンイェー』


掴んだ場所が光った。ランドットの魔法か。掴む場所まで読まれるなんて。


「クッ――」


眼前に生じる爆炎。流石に無傷ではいられないか。

爆心地を掴んだ手が熱い。腕が吹き飛ばなかったのはルレちゃんの魔法のおかげか。


「ウグッ」


地に横たわる事になってしまう。

...狙いが分かりやすすぎるのだろう。戦術が必要、という事か。


「1発目が当たるなんて、君は運命力が無いんじゃないの?」

「どういう、こと」

「1発目は適当に爆発を起こす。セレンイェーで標的との誤差を修正して、もう1回トレイルシャフでドカンとやんだよ」

「手の内を説明する余裕があるなんてね」

「実際余裕あるしな」


はぁ...

確かに手も足も出ない。だけど、それはこれまでの話。

そしてこれからの事は誰にも分からない。

私が今出来る事は確認と実践。


ずっと使っていなかった剣を地面に突き立て、起き上がる。


「覚悟」

「お~怖い怖い」


剣は地面に突き立てたまま突撃。


「おいおい、熱くなりすぎて剣を忘れてるぞ~」

「ハァァアアア!!」


紙一重の所で攻撃を躱される。ただの拳もただの蹴りも全然当たらない。


『殺す』


「ん?」


『瑠璃以外は』


突き、回し蹴り、肘で腹を狙いそのまま顎へ拳を突き上げる。

だが、それも無駄。


「危ない危ない」


『全て』


何をやっても躱される。だけどこれでいい。

大きな攻撃を出して反撃を誘う。顔に渾身の一撃を入れようとするが片手で軽くいなされる。


「必死すぎて何喋ってるか分からん、ぞ!」


来た、ランドットからの反撃。私の腹へ向けた決定打。

この速さの拳なら私の速さで避け切って後ろに回れる。

ランドットの拳が前に出る前に、左足を前に出し左前へ進む。

そして右足を前に出し右前へ進む。


『殺す』


「残念だけどそれは読んでいた」


『ドットコード:ロイ』


ランドットが振り向き、掌をこちらに向ける。

それと同時に剣が私の元に現れた。


「2本目ェェ!!」

「あぶなっ」


剣は無を薙ぎ払い、ランドットの姿は2歩後ろの位置に移動していた。


「おいおい、どこに二本目をもってやがった。魔法か?」

「ガブエイラ特注の折りたためる剣だ」

「あ~、あいつなら作れるな。まぁその大きさだと2本が限度って感じか?」

「さぁね」


あの人本当に何でもできるな。

まぁそのおかげで、ランドットの後ろにあるはずの剣が無くなってることはばれてない。そしてどんな状況でも剣が手元に来るのが分かった。

あとは独立してる刃先が刀身に引かれるか。


「深い傷を負う前に降参したら?」

「馬鹿言うな。動きが悪くなってきてる奴にやられるか」


確かにランドットと戦い始めた時に湧き出ていた力がほとんど無くなっている。

もっと鍛えないといけないな。


「そろそろ終わらせる」

「おう、かかってこい」


私は力の限りランドットの奥をめがけて刀身をぶん投げた。















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る