10話-イーソド

-食前-


「びゅーん」

「どーん」


チカチカしてる。何だろう、この言葉に出来ない感じ。


イーソド


町というより都市。話に聞く中央大陸よりずっと大きい町――都市だな。


「空に物や人が見えるよ、ルレ」

「あれ何の魔法だろう」

「分かんない」


冒険者が口を揃えて訳も分からないことを言う訳が分かった。

上を向いたまま顔を固定されたみたいに都市を思わず見上げてしまう。


「ルレ、行こうか」

「うんー」


都市の中は分からないで溢れていた。ここに住んでいる人は私の言葉が通じるのだろうか。少し不安になる。


「この都市についてそこら辺の人に聞いてみるよ。ルレ、手を握っててくれないかな」

「もちろん!」


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「ここが宿?」


そこら辺の人が嘘を言っていなければここで間違いないのだが、私の目に映っているのは小さな店程度の建物。


「とりあえず聞いてみるよ」


ルレの手を取り、小さな建物まで行く。


「こんにちは」

「はーい、こんにちは」

「ここは宿屋で間違いないですか?」

「えぇ、ここは間違いなく宿屋ですよ」


え?本当に?


「イーソドに訪れた人は皆さん同じ反応なんですよね~。どのくらい泊まりますか?」

「2回目の食前までで。1部屋でお願いします」

「はーい。それじゃあ2人とも右手を出して下さい」


言われた通りに右手を出す。


「はいはいペタペタと」


手の甲に何か貼られた。


「これは?」

「鍵ですよ~。貴方達から見て右に変な機械あるでしょ?」

「機械?」

「そう、機械。イーソドは機械というものを使って発展したからね~。まぁ魔法みたいなものだよ」


よく分からないけど機械は魔法みたいなもの。憶えておこう。


「それで、その機械に入って少し待つだけで部屋に入れるからね~」


言われた通りに機械に入る。機械の中は人が数人入れるほどの大きさ。

あとは少し待つだけで良いって言われたけど。


視界が突然切り替わる。


「え?」


気づいたら私達が借りた部屋であろう場所に出た。どうなってるんだろう。

中は大きなベッドに植物に見慣れないものが沢山。

窓の外はどうなってるんだろう。


「...」


窓の外はイーソドとはまた違う景色。

魚が空を泳ぎ、色々な色の光が右から左へ流れ、見たこともない大きな星が見える。

それにすでに獣の闇だ。宿に訪れた時は食前だったのになんでだろう。


「ゼタちゃん、ここは電脳空間って場所だって!受付の人が言ってた!」

「電脳空間?聞いたことが無い場所だな」

「この手にある鍵を使って――えーとなんだっけ?何かすると電脳空間に行けるんだって!」


なるほど、この右手にある鍵にはそんな役割があったのか。


「凄いね。この鍵も機械ってやつなのかな」

「かなー?魔法みたいで凄いよね!」

「うん」


しかし困ったなもう獣の闇なのに全然眠くないしお腹も空いていない。

宿の受付に聞いてみるか。


「ルレ、ちょっと受付さんの所まで行ってくるよ」

「はーい」


部屋から出る。すると外は明るい。

あれ?さっきまで外は暗かったはずなんだけど。


「受付さん」

「どうしました?」

「獣の闇ってもう来ました?」

「あーーそれはね~、電脳空間が特殊なんだよ」


特殊。


「あそこはもう1つの世界みたいなもので違う時間が流れてるんだよ」


時間。時間?


「時間とは機械みたいなものだったりします?」

「うーん...難しいな~」


「食前から次の食前までを数字にする」


数字にする。


「1から23までいったら1に戻る。この1から7を食前、8から14を食後、15から23を獣の闇として考える」


そう言って受付が何かを取り出す。


「これは時計というもの。今は6と書いてあるからもうすぐ食後になる感じかな。これが時間」

「食前、食後、獣の闇を更に細かくして数字にしたもの」


という事だろうか?


「そうそう!こんなにあっさり理解してくれるなんて私も説明が上手になったなー!ちなみに――」


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「ゼタちゃーん」


あぁ...頭がどうにかなりそうだけど何とか理解した。

時間というのはかなり便利かもしれない。


「どうしたの?ゼタちゃん」

「急遽買うものが出来たから商業エリアに行こう」


ルレちゃんの手を取り商業エリアに向かう。

イーソド――私の常識が塗り替わるかもしれない。この都市で出来る限り色んな知識を吸収しよう。


「何が売ってるか楽しみだね!ゼタちゃん!」


私は興奮を抑えながら商業エリアに向かった。


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