8話-観光
「ルレ、冒険者の証も貰ったことだし観光しようか」
「うん!」
「じゃあまずはおもちゃ屋に行こう。マルトのおもちゃは他では作れない面白い作りになってるらしいから」
「すっごく楽しみ!じゃあ出発!」
ふふ、せっかくだから私の天使が喜ぶような面白いものが見つかると良いな。
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おもちゃ屋の扉を開ける。
店内は木でできた鳥が飛んでおりテーブルの上にはおもちゃの騎士が隊列を成している。これがマルトでしか滅多に買えないおもちゃ達。
話には聞いてたけど全部本当だったんだ。
「ゼタちゃん!おもちゃが動いてる!」
「凄い。これ魔法なのかな」
店主らしき人が声をかけてくる。
「いらっしゃい。どんなおもちゃが欲しいのかな?」
「こんにちは。私には"木組みと鐘"を下さい」
「はいよ。このパズルを解けたらきっと良い事が起こるよ。そちらのお嬢さんは?」
「ルレにはどんなおもちゃがあるか色々見せてあげてください」
「ほらお嬢さん、ここには色々あるよ」
店主がおもちゃを次々に出す。
開ける度に中身が変わるビックリ箱。歌を吹き込むことが出来る鳥。
色が変わり続けるおもちゃのゼリーズに伸縮自在のオークのおもちゃ。
「わぁ!どれも凄いよゼタちゃん!」
「うん。どれも魅力的だね」
天使が笑顔だと私も嬉しくなる。ここに連れてきて正解だな。
「これ下さい!」
「お、この子守鳥だな。1つでいいかい?」
「ねぇゼタちゃん」
天使が上目遣いでこちらを見る。
ふふ、そんな目で見なくても好きなだけ買ってあげるのに。
「どうしたの?ルレ」
「2つ欲しいんだけどいい?」
「もちろん。店主さん2つ下さい」
ルレが買ったのは歌を吹き込むことが出来る鳥のおもちゃ。
店主が使い方を教えてくれる。
この鳥を使えばいつでも天使の歌声が聞ける...!全身に衝撃が走った。
「はい、ゼタちゃん」
ルレちゃんが店を出て開口一番子守鳥を手渡す。
「お互いに一番得意な歌を入れて交換しよ?」
私の考えが読まれてる?顔に出てたかな。
「いいよ。今すぐやろう。今すぐ」
「は、恥ずかしいし人がいないところでやろう?」
「ぁ...あ、うん。そうだね」
ルレちゃんの言う通りだ。冷静さを欠いていたかもしれない。
「じゃあ大きな岩の前にある広場に行こう。食後は演奏会が開かれてるはずだよ」
「わー!すっごく楽しみ!」
「それじゃあ行こうか。広場まではすぐだよ」
人通りの多い道を歩いていると演奏会から流れているであろう曲が次第に聴こえてくる。演奏会が開かれている広場まで来る。
「凄い...」
思わず声が漏れるほど神秘的で引き込まれる演奏だった。
曲は静かなのに速かった。そして体の中に響いてくる。こんなの初めての感覚だ。
・
・
・
「それでは休憩に入りまーす!次の演奏は獣の闇に行いまーす!まぁこの町ずっと明るいんですけどね!」
あっという間に演奏が終わってしまった。早い、終わるのが早すぎる。
「ゼタちゃん、凄かったね...」
「うん。あんな凄い曲初めて聞いた」
「ルレ、もう1回聴かない?」
「大丈夫?獣の闇って魔物沢山出ない?」
「大丈夫だよ。マルトは常に明るいし憲兵さんも沢山いるから魔物は寄ってこないんだ」
「そうなんだ!じゃあもう1回聴こう!こんなに凄いの初めてだもん!」
「よし、じゃあ少し待とうか」
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-獣の闇-
「やーやードーモドーモ!」
奏者が来た。一体何をどうしてあのような曲を作り上げているのだろう。
早くあの心奪われる演奏をしてほしい。
「じゃあ演奏の前に私がどうやって演奏してるか、その仕組みを簡単にだけど教えるね。マルトに来るのが初めてだよって人がいるかもしれないからねー」
そう言うと奏者は球形の楽器を1つ取り出し呪文を唱える。
「はいじゃあ注目。この楽器に魔法を使って表面に水を張ったんだ。そして一定の間隔で波紋を作るようにすると...」
球形の楽器は一定の間隔で音を出し始めた。
「それじゃあ次はこれね」
長くて太い棒を取り出し呪文を唱える。
「中をくり抜いたこの棒の中に炎の球を4つ出して一定の間隔で小規模の爆発を起こす。爆発の大きさは小さいやつと大きいやつを作ってね。これをさっきの楽器と組み合わせると...」
お腹に響く音に先ほど感じた速さ。こうして出来ているのか。
「これが曲の土台だよ。そしてこの楽器で軽い飾りつけ」
中心部が硝子になっている筒を取り出した。
「この筒の中に魔法で氷を2つ生み出してお互いを削らせる。削るときの力で音が変わるんだ」
「え、何?長い?そっかー。あとは楽器を2つほどちょちょいとやれば」
先ほどの悲しげで静かな音が出来上がると。
「どう?凄いでしょ?これを知った後に聴く演奏はまた違うからねー。それじゃあ始めるよー」
食後とはまた違った曲。
私は神秘的な曲に聴き入った。
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