2話-剣閃
周りが徐々に明るくなっていく。光の粒が地面から溢れ、天に帰ろうとしている。
世界が命の輝きを放つ。大地は柔らかな光に包まれ、空からは祝福の光が差す。
魔物の姿が露わになる。
「グゥゥ...」
影が思わずたじろぐ。隙が出来た。切るなら今。
「いくよ、ハッ!」
一息で影の元まで行く。
斬られた部分から血が噴き出し、膝を突く。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「まだだよ。影は必ず殺す」
「ハアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!」
左腕も切断し、攻撃の手段を減らす。そして影の足を断ち、逃げ場を無くす。
四肢があった場所には臙脂色をした剣の軌跡を残すのみ。
影は虚ろな目をして地面に伏せる。奴は死を覚悟した。
「これで最後。私は美味しかった?」
私は影の首に全力の一撃を叩き込む。
影は首を斬られると元からいなかったかのように姿が消えていく。
なんとか倒せた。剣が赤い粒になって消えていく。
ルレちゃんは大丈夫だろうか。
指一本触れさせることはなかったはずだけど心配になる。
「大丈夫?ルレ、怪我とか―
「ゼタちゃーん!!!」
「ウッ」
ルレちゃんが私に抱き着いてくれる。天使かな?
「びええええ~~~~~~ん!!!ズビズバッ!!」
「よしよし」
よく見ると大粒の涙を流している。鼻水すご。
「ルレ、怪我してない?」
「し”て”な”い”」
「念の為に確認するよ」
ルレを体から引きはがして、全身を確認してみる。
足はいつも通り綺麗な白色、華奢な腕。うーん、足も腕ももちもちしている。
そして傷一つない綺麗な顔。首、脇、良し。見える範囲に怪我は無さそう。
「うん、怪我は無いみたい」
「ゼダぢゃんぼんどにいぎがえっだぁぁ」
「うん、私は今ここにちゃんと生きてるからね」
なぜ生き返ったのか あの白い人型は何者なのか 疑問は尽きない。
が、それはそれとして疲れた。
「ルレ、獣の闇だし寝よう。私疲れちゃった」
「うん!一緒にね!」
「ふふ、そうだね」
光の粒は天へと昇り切り地上から姿を消す。命は眠りにつき、大地は影を広げる。
空は闇を思い出し、私たちは手を繋いで家に帰った。
二人で同時にベッドに倒れこむ。
「「むあーー」」
どうやらルレちゃんもヘトヘトのようだ。お互い意味のない声を出すくらいには。
「ねぇゼタちゃん」
「なに、ルレ」
ルレちゃんが私に向かって微笑む。なんだろう、今日頑張ったご褒美かな?と思っていると、突然ルレちゃんが私の胸に顔をうずめる。
「――」
声にならない叫びをあげている間に手と足を後ろに回して全身で私を掴み、全身をルレちゃんが包む。身動きが取れない。
「
「ん、おやすみ」
それにしてもあの剣、私の知っているものとは違った。刃が片方にしかなかったし刃先は剣から独立して浮いていた。でも扱う分には違和感はなかったし...
考えても分からないものは分からないな。
私は眠った。
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