1話-契約

瞳を開く。誰かの夢を見ていた気がする。体を起き上がらせてあたりを見回してみる。あたり一面 闇、闇、闇。

どこを見ても闇。ここはどこだ?私は何だ?何も分からない。

とにかく、前に進もう。何故か前に進みたくなったし。


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何もない。どこまで行っても闇だ。体が熱い。何故か大きな声を出したくなる。


「クッソーーーーー!!!!!!!!」


ハァ ハァ ハァ

私は何をしているのだろう。この闇に答えがあるといいのだが。


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あれから歩き続けたが何もない。何となく声を出してみる。


「うーーーあーーーーうぃーーーー」


さて、これからどうしようか。まぁ、前に進むことしか出来ないんだけど。


「うぉううぉういぇいいぇいふぉーーー」


歩きながら何の意味もない言葉を出してみる。...闇だなぁ。

なんで私は前に進んでいるんだろう。疑問に思ったが足は不思議と止まらなかった。


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ん?何だあれ。眩しい。なんか眩しいのがこちらに近づいてくる。


「おーい、探したよ~」


なんか人型の奴がこっちに手を振っている。何だろう。


「やぁ、クーノ・ゼンタ」

「何?それ」

「君の名前だよ。クーノ・ゼンタ 女 3の鐘 赤い髪 どう?思い出せそう?」

「クーノ・ゼンタ...」


私の名前。駄目だ、なんだかしっくりこない。本当に私の名前なんだろうか。


「まだ駄目っぽい?ヒットンド・ルレ 女 2の鐘 ほら金髪ですごく元気がいい子。君がさんざん守る守るって言っていた子」

「ルレ...ルレ?」


何回もルレという言葉を繰り返す。


「赤い瞳に黒い体をした魔物。ルレちゃん、今危ないよ」


黒い...魔物。魔物?そうだ、私はあの魔物を殺さなければいけない。

そして


「私は、ルレちゃんを守らないといけない。」

「良かった、一番大事な所は思い出せたようだね。ようやく契約に移れるよ。」

「契約?」

「そう!君にとって良いことがあるよ。契約してくれるのならまず記憶を戻してあげるけど、どう?」


断る理由は無さそうに感じる。


「契約するよ。記憶を戻して」

「はいよ~、ほいっ」


...なんで忘れていたんだろうか、私の記憶が鮮明になる。先ほどまでの事がハッキリと思い出せる。この眩しくて白い奴はルレちゃんが危ないと言っていた。急いで契約を終わらせてルレちゃんの元に行かないといけない。


「それで、契約の内容は?」

「わたしが君に能力を2つあげる。そうだなぁ、凄い剣と魔法が貰えると思ってくれていい。」

「見返りは?」

「楽しませて」


楽しませる。後は...ん?それだけ?凄く言い切った感を出されている。


「それだけ?」

「うん」

「ほかに何かないの?見返りがそれだけだと怪しい」

「それだけ。後は君のしたいことをしてくれればいい」

「...分かった。」


何を考えているのだろう。


「安心して。ここから出してあげるし、本当に楽しませてくれるだけでいいから」

「分かった。それじゃ、剣と魔法について教えて」

「それは秘密だよ。ヒ・ミ・ツ。君が解き明かしてくれ。代わりに魔物の出所を教えてあげるよ」

「黒い魔物がどこから来ているのか知ってるって事?」


「そう、あの黒い魔物は"影"と呼んでいる」



「中央大陸に向かうといい。不思議な模様の目をした少女がいる。その少女が魔物を発生させている元凶だよ」

「その少女を倒せば影というのは消えて、いくらか平和になるという事?」

「その通り!詳しい場所までは分からないから頑張って!」


「それじゃあここから出すよ」

「待って、まだ聞きたいことがある。貴方は怪しすぎる」

「わたしは暇つぶしをしているだけ。それじゃあいくよ」


質問は許さない、という事か。確実に裏がありそうだ。

突如、白い人型がより一層眩しく光る。

すると、私の身体が白い光に包まる。足が光の粒子になって徐々に消えていく。


「大丈夫、ルレちゃんの前に現れるようにしたから」


膝から下が消え、下半身が消え、上半身もいずれ無くなる。

やがて顔まで到達する。顔が光の粒子に変わる。眩しい。

身体が完全に光の粒子をなって消える直前、白くて眩しい人型は質問を投げかけてきた。


「君は、誰を守りたいんだい?」


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視界が開けてきた。眼前には私を喰らったであろう影が。

そして、恐らく私の背後にはルレちゃんが。

あの人型は最後にすごく簡単な質問を投げかけていた。

ふふ、すごく簡単な質問。


「私はクーノ・ゼンタ。ヒットンド・ルレを守る者」


「ルレに手を出そうとしたね。その蛮行、許さないから」


私は剣を構えた。





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