6月21日

《雨》


 少年は、夜全く眠れないみたい。とにかく暴れる。鳥みたいな手足とは思えないほどの力で殴られたり、蹴られたり。なるべく躱しているけれど、放っておくと彼自身を傷つけそうで怖い。かといって抑えるのも一苦労だ。どれだけ力を抑えていても、本調子ではない痩せ細った身体には負担が大きい。簡単に折れてしまいそう。そうなったら彼はぼくを恐れてしまうだろう。

 こんなにも相手を思って向き合ったのは初めてかもしれない。


 一晩中騒いでいたものだから、朝は苦情の嵐だった。スタンには「面倒見られないなら、ちゃんと考えろ」と言われた。そうだよね。ぼくは甘すぎた。この船には他に9人も乗っているんだ。ぼくの身勝手でみんなの日常を壊すのは、船長以前に一乗組員として有るまじき行為だ。

 まずは彼が夜でも落ち着けるように努める。

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