6月20日
《曇り 湿気多め》
医務室に預けていた少年があまりに暴れるので、船長室にて面倒を見ることにした。船医のリヒトは一晩で疲れ果てていた。申し訳ないことをしたと頭を下げると「私が面倒見るのは船員だけだよ」と、微笑まれた。いつもの、目が笑っていない笑顔だ。「彼は船の一員ではない」とも「彼の治療は請け負わない」とも取れる。
この子はうちの子だよ。改めてそう伝えるも、リヒトはメガネの奥の目を剣呑に細めて、深いため息をついた。「……私は反対だよ」絞り出されたような細い声。ぼくは何も返せないまま、医務室のドアを見つめていた。
少年はよく眠っていた。夜に暴れ疲れたのだろうか。濃いくまが不気味で、哀れで、かさかさに乾いた目元を撫でた。擦り寄ってくる様が猫みたい。ここが、彼の拠り所になるといいな。
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