焦燥

6月19日

《晴れ 暑い》


 立ち寄った島で、少年を拾った。少年と言っても多分ぼくより少し上だろう。育児放棄をされていたようで、上背はあるものの身体は骨と皮だけになっていて痩せ細っている。背負った彼はあまりにも軽くて、泣きそうになった。生命が、こんなにも軽くていいのかな。

 船に戻ったのは、真っ赤な夕陽が海に帰る頃だった。甲板にいたサンディと狙撃手ラ・エル、魔術師ロジェがよたよた歩くぼくを見つけて駆け寄ってきた。

 死んだように眠る少年に「死んでないか?」と首を傾げるラ・エルに、思わず強い口調で言い返してしまった。軽くても、薄い胸の向こう側で、彼の心臓は確かに動いていた。それをぼくは身を持って感じている。

 彼を船に乗せる。そう言うと、みんな顔を顰めた。ロジェは小さく呟いた。「何様のつもり」と。ぼくは大きく息を吸って、みんなを見回した。船長様だよ。

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