6月12日
《曇りのち雨》
コルザ島は明日離れることになった。みんなは馴染みの店があるみたいで、殆ど船にいない。ぼくは行きたいところもなく、一人で甲板に転がっていた。
空が遠い。薄い灰色の雲が太陽を覆っている。多分前見たのと同じく雲 ――高層雲だと思う。確認したい相手は夜まで帰ってこなかったので答えはわからないが、夕方から雨が降り出したから正解だろう。
鳥は羽が重たいみたいで随分低い位置を飛んでいく。落ちてしまわないかはらはらしたけれど、力強く羽ばたいてどこかへ向かっていった。巣に戻るのかな。それとも餌を探しに行くのかな。転がったまま動く気力のないぼくとは大違いだ。
大きなため息を吐くと「うるせー」と上から声が降ってきた。狙撃手のラ・エルが見張り台にいた。全然気づかなかったぼくは慌てて起き上がり、声を張り上げて謝った。それに返事はなかった。
ラ・エルは出掛けないのか。いつからそこにいたのか。そろそろ雨が降るかもしれないよ。などなど、話しかけてみたけれど、どれにも返事はなかった。でも雨が降る前に、彼も船内に戻ったらしい。ぼくの言葉を覚えててくれたんだったら、嬉しいと思う。
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