6月7日

《雨 風強い》


 悪天候の日に限って黒旗に襲われた。奇襲がしやすいからだろうけれど、警戒して見張り台にいてくれた狙撃手ラ・エルのおかげで速やかに対応できた。ただ高いところが好きなわけじゃなかったみたい。


 追い払った後 ――もちろん金目のものは回収して―― ラ・エルにお礼を伝えた。彼はぺちゃんこに濡れた髪のせいでいつもより幼く見える顔を、臭いものを嗅いだ猫のように歪め、「そういうの鬱陶しい」と言った。素直に気持ちを受け取れないタイプみたい。あわよくば少しでも話が出来たら……と思っていたのに無理そうなので背を向けると、彼のほうから続けて声を掛けられた。

 「戦闘中どこにいた?」と聞かれ、首を傾げてしまった。どこ、と言われても普通に甲板にいた。そう言うが、彼は釈然としない顔をしていた。何故そんなことを聞くのか問うが、彼はぼくの質問には答えないまま去ってしまった。

 内容はどうであれ、話が出来たので今日は花丸だ。

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