6月2日

《曇りのち雨 風あり》


 天気の勉強をしようと思い、午前は甲板に出ていた。空色はどこにも見当たらず、天は灰色のベールに覆われていた。その向こう側で変わらず仕事をしている太陽は、雲の厚みのせいか、点のように見えた。航海士ナハトに雲の種類を尋ねると「高層雲」だと教えてくれた。「午後は雨になる」ってことも。

 ナハトの予報を肌で感じたくて、ずっと空を見ていた。昼の少し前、突風で大きく船が揺れた。ぼくと同じように朝から甲板にいたロジェの身体が傾いたので慌てて支えに行くと、彼はビー玉みたいな目をまんまるにさせて驚いた。

 かつて同室だった船員は、ロジェしか残っていない。彼とは一番仲が良かったけれど、ぼくが部屋を出たきり話してもいなかった。ロジェは何か言いたげに眉を寄せ、ぼくの手から逃れると「ごめん」と言って船内へ走っていってしまった。こういう時は「ごめん」じゃなくて「ありがとう」だと思う。


 午後は本当に雨が降った。その旨をナハトに伝えに行ったらバスタオルを投げつけられた。

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