6月1日

《雨時々曇り》


 操舵手のミシェルに船の扱いを聞くと、とてつもなく渋い顔をされた。嫌々ながらも断らないのは、根が優しいからだと思う。

 先日ナハトに魔導船の仕組みを聞いたものの、やっぱりやってみないとわからない。エルツ「ヒンメル」に魔力を込めた経緯をミシェルに伝えたが、特に返事はもらえないまま操縦室へ着いた。船によっては舵輪が甲板にあるけれど、うちは見晴らしのいい大きな窓のついた室内に置かれている。

 そういえば、今は誰がこれを扱えるのだろうか。聞いてみると「そんなことも知らんの?」と不機嫌そうに頭を掻いていた。ぼくの他にはミシェルと、案の定サンディ。彼はなんでもできるんだね。なら、サンディが教えてくれればいいのに。そしたら、ミシェルに嫌な顔をされることも、彼の面倒そうな声も知らないままでいられた。


 魔力を込めながら舵輪を回すと、思い描いた通りに帆が張られた。雨で風もあるから、その一瞬で船が揺れてとても怒られた。

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