5月30日
《晴れのち曇り》
ナハトに呼ばれた。いよいよリンチでも受けるのかと身構えていたけれど、彼が案内してくれたのは海図室だった。これからはナハトが中心となって使う部屋だ。
「うちの船の仕組みを知ってるか」彼に聞かれて、ぼくは素直に首を横に振った。「そうだと思った」とナハトは手招いて、海図室の一番奥にあるエルツを見せてくれた。
魔導鉱石の一つ、エルツ「ヒンメル」。淡いオレンジに混ざる空色と朱色は、日が暮れる昼と夜の狭間の空模様によく似ていた。魔力で動く魔導船はこのヒンメルが核だという。ぼくの掌より少し大きいくらいの石が、この大きな船を動かしているなんて不思議だ。エルツ「ヒンメル」は舵輪に繋がっていて、予め決められた数人の魔力だけを認識して船が動く。
ナハトは言った。「ここにあなたの魔力を込めて」と。それは認めてくれているということだろうか。胸の内が表情に出ていたらしく、ナハトは目を伏せて首を振った。「ただ、あなたは船長だから」認められなくても、船長なんだな、ぼくって。
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