5月29日

《むかつくぐらいの晴れ》


 宝物庫が空な件について。


 気づいたのはサンディで、原因は二日前開けた後に鍵を閉めなかったぼく。盗んだのは言わずもがな、彼らの内の誰かだろう。

 ただでさえゼロに近かった信用は底を尽き、マイナス値になった。言い訳のしようがない。「謝ったところで戻ってはこない」と激昂され、返す言葉がなく項垂れた。そんな様子も癇に障るようで、あわや乱闘かと思われたけれど、サンディが止めてくれた。「殴ったところで戻るわけでもない」全くもってその通りだけれども、殴れば少しは気が晴れただろうに。いや、殴られたい訳ではないが。


 宝物庫には今後の活動資金となる金銀財宝が詰まっていた。それと、パロット船長が大切にしていたイエローダイヤモンド。彼はエンゲージリングを作る時に必ずそのイエローダイヤモンドの欠片を埋め込んでいたという。いわば彼の形見のひとつだ。それがなくなった。たとえ盗んだのがかつての船員であろうとも、許される行為じゃない。

 サンディ曰く「お前への嫌がらせだろう」らしい。彼らにはたっぷりと餞別を渡していたのでお金に困ることはないから。

 本当に、嫌がらせだけなのだろうか。ぼくにはそうは思えない。


 空っぽになった信用を少しでも得るために、必ずイエローダイヤモンドを奪い返すと決めた。

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