奮起

5月28日

《晴れ時々曇り》


 新しい航海士はナハト、船医はリヒトに決まった。二人ともサンディの同郷で友人だって。

 まーたぼく抜きで話が進んでいく。サンディを中心に。「実質サンディの船じゃん」って声が聞こえた。ぼくもそう思う。


 ナハトは目にかかるぐらい長い前髪で、海賊とは思えないほど肌の色が青白い。ちゃんと食べてるのか心配になって聞いてしまった。なにやら言っていたけれど黒いマスクをつけているのと、声が小さいせいで聞こえなかった。かわりにリヒトが「栄養は摂らせてるから心配しないで」と教えてくれた。

 リヒトはくすんだ金髪をカチューシャでまとめて額を出している。剥き出しのおでこに冷却シートを貼って彷徨いているのを何度か見たことがある。暑がりなのかな。ナハトよりとっつきやすく、ぼく相手にも気兼ねなく話してくれる。でも、彼の黒い目は笑っていない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る