5月27日

《晴れ 風もなく穏やか》


 「これ以上嫌いになりたくない」と言われた。「愛したジョンブリアンの記憶を、負の感情で上塗りしたくない」だって。

 ぼくに話す間も与えずに、13人の船員たちは背中を向けた。ここに拾われた当初は大きく感じていた背中が、項垂れてちっぽけに見えた。こうさせてしまったのは、ぼくだ。

 たぶん、そのまま送り出すべきだったのだと思う。ぼくだって、これ以上嫌われたくない。でも止められなくて「いつでも待ってる」なんて口走ってしまった。返事どころか足を止めることも振り返ることもなかったけれど。


 パロット船長。みんなはこの船、終わりにしたかったみたい。でもぼくは、あなたの気持ち、わかる気がするよ。たったひとり、自分だけのせいで終わらせたくなかったんだよね。ぼくもそう思う。

 どれだけ嫌われても、この船を動かし続けるよ。

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