5月22日

《雨》


 次の針路が決まった。ぼく抜きで。

 ちょっと出かけていただけなのに、帰ってきたら出航準備をしていて、流石に少し焦った。……いや、かなり。ぼくもみんなと同じで行き場なんてないので。

 動き出していた船になんとか戻ると、甲板にいたサンディが目を丸くしていた。もしかして知らなかったのかな。わざとじゃないならよかった。と思ったのも束の間、航海士の胸ぐらを掴んでなにやら言い争いをしていたから、サンディともども嵌められかけたみたい。うっかりそのまま殴り合いに発展しそうだったから間に入った。五十路の航海士と20代のサンディじゃ、どっちが怪我をするかなんてわかりきってるから。航海士は憎々しげにぼくを見て、握ったままの拳を震えさせていた。血が出るほど強く握っていた。


 本当に、何故パロット船長はぼくを指名したんだろう。

 彼が愛した船員たちが、こんなにも苦しんでいる。きっと彼らだって、ぼくを憎みたいわけじゃない。帰る場所のないぼくを受け入れてくれた優しい人たちだ。みんなには笑っていて欲しい。彼が愛したままのみんなでいて欲しい。

 なにか手掛かりでもないだろうか、と部屋を調べてみた。ベッドの下から、小舟が見つかった。

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