5月21日
《小雨あり》
船長になったものの、変わったのは部屋と周りの態度くらいである。人に嫌われると冷たい視線を浴びると言うが、残念ながらぼくはそれを超えてしまっている。そもそも視線が合わない。いないものとされているみたいだ。賑やかだったころの甲板が懐かしいとさえ思ってしまう。心が渇いてしまいそう。
この現状をどうにかするために、まずはぼくから変わろうと思う。慕われる……には長い時間が必要だろう。目下の目標は「船長と呼ばれること」にする。
今は名ばかりの船長だということぐらい、自分でも痛いほどわかっている。一番の新人である事実は、泣いても喚いても変わらない。なら、誰よりもジョンブリアンのことを理解してしまおう。ぼくには情報が足りなさすぎる。
ジョンブリアンは色付き海賊シーウルフのひとつ。掲げる海賊旗は黄色。船員はぼくを含めて23人。その内リードエンゲージを結んでいるのは18人。
パロット船長が立ち上げ、今年で19年目になる。シーウルフの中では中堅。それにしては人数が控えめなのは、5年前の戦争で半数以上が亡くなったから――とパロット船長の日誌に書いてあった。
……ぼくが立派な船長になれば、みんなにも笑顔が戻るかな。そうなるといい。ぼくはこの船が好きだから。
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