5月20日
《曇り 風強い》
コックに声を掛けたが、断られてしまった。「自分たちで行くから」って。ぼくと一緒には行きたくないらしい。
今まで雑魚寝していた部屋から追い出された。仲良くしてくれていたロジェには「ごめん」と謝られたけれど、他の4人は目も見てくれず、よほどぼくの船長就任が気に入らないらしい。仕方がないので、今日からパロット船長の部屋を使うことにする。
元より荷物はほとんどない。彼の生きた証が色濃く残る寝室は、ちょっとだけ息苦しいが、今のあの部屋ほどではない。
ベッドはふかふかだし、座り心地のいいソファまである。毛足の長いラグに転がって今後のことを考えていると、掃除に来た副船長に踏まれかけた。
ぼくがいなければ間違いなく船長に選ばれていたであろう副船長のサンディ。多分誰よりぼくが憎いはず。しかし彼は「好きに使え」とだけ言って、黙々と掃除に励んでいた。変わった人だ。思わず、うっかり、そう口から出てしまった。それでも彼は気分を害した様子はなく ――いや、ちょっとだけ眉を寄せていた―― 「お前ほどじゃない」と鼻で笑った。
「副船長。気に入らないなら替えていい」
サンディは淡々と告げた。温度のない声だった。
みんなはぼくを降ろしたくても降ろせないのに、ぼくが誰かを替えるなんて選択、ありえない。それに、彼がいいと思ってしまったから、そのまま伝えた。サンディは少しだけ、笑っていた……気がする。
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