京都11レース、右回り、3000メートル、第103回菊花賞

『競馬史に残る決戦の舞台はにび色の雲に覆われています。春の中山で幕を開けた今年の牡馬クラシックロードがここ淀のターフで迎える最終章を迎えます。果たして三年ぶり羅田厩舎二頭目の快挙で幕を閉じるのでしょうか、歴史を重ねて第百三回の菊花賞です。ティムトットリドルの三冠か、それとも阻止か! 運命の時を控えた十八頭がスタンバイしています。


 さぁ、今スターターがゆっくりとゆっくりとスタンドカーに向かいます。場内からは拍手大歓声、ティムトットリドルの三冠なるんでしょうか。さぁ、待ちに待った菊花賞の、三冠のファンファーレです。

唸るような、突き上げるような大歓声が今、雲が晴れてきた空に吸い込まれていきます、三冠を期待する歓声です。


 我が国のクラシック体系が確立してもうすぐ百年、未だ八頭しか打ち立てていない三冠の金字塔。今、その偉業にティムトットリドルと足立順平が挑みます。さぁ、歴史の一ページ、見届けましょう! 菊花賞です! スタートしました!

 飛び出したティムトットリドルは良いスタートを切りました。

 さぁ、足立順平はどこに行く、長い長い淀の芝、いつも通りにハナに立つか、それとも番手に控えるか、メグロロンバートは後方です。

 ルックアップビームが逃げ、その直後に足立順平とティムトットリドルです。

 さぁ、まずは一周目の坂、まずはこの坂をどう落ち着いて下って行くか、これがレースの一つのポイントです。ルックアップビーム、それからゲルマックイーン、バンキッシュルーブ、ジャックフルールちょっと行く、現在四番手から五番手。それからサダオガンバレ、そしてその外側デーンコマンド、その直後にティムトットリドル。いつもとは完全に違う位置取りだ。ティムトットリドル足立順平は手綱を引っ張っている。その外側から行っているのがコストラノートです。インコースから3番のグレイトフルサンズ、その後ろからウォーオブマインがいてスリザリンザール、後方からメルメルモー。

さらにはシアターオンウィン、その後ろ……メグロロンバートは最後方、吉武は最後方を選択しました。さぁ、一周目のホームストレッチです。大歓声を一身に浴びてティムトットリドルが三冠目指してひた走ります。

 ご覧の鹿毛の馬体、それから右流れの白い流星、ティムトットリドルです。ここまで上手く行っているんではないでしょうか足立順平。ここで大歓声が挙がった! ティムトットリドルは中団よりやや後ろ、ティムトットリドルは中団よりもやや後ろでレースを進めています。

 さぁ、菊薫るゴール板を通過して、これから1コーナーに入って行きます。

 先頭はジャックフルール、そして二番手にコストラノート、三番手の位置にルックアップビーム。それから、その後ろですがサダオガンバレがいて、相変わらずティムトットリドルは中団、馬群の中団辺り。そしてメグロロンバートは後方、吉武は殿一気の競馬を選択するんでしょうか。さぁ、これから向こう正面に入ります。先手を取っているのがジャックフルール、しかしコストラノートが仕掛けてここで先頭に替わりました。サダオガンバレ三番手、内からルックアップビーム四番手、その外側にデーンコマンド、インコースにバンキッシュルーブ、さらにはスリザリンザール、ゲルマックイーン、さぁ、そしていた! 外側にいました輝く鹿毛の馬体です。デビュー戦から紡ぎ続けた太い絆、ティムトットリドルと足立順平。互いを信じてこれから二度目の坂を迎えます! その後ろからウォーオブマインがいる! インコース、シアターオンウィン、さらにはメルメルモーは、なんとティムトットリドルに引っ付くように競馬をしている。さぁ、その後方からマスタングダンス、ダンスミルペパー、さらにはマイティスタイル、後方から2頭目に相変わらずメグロロンバート、最後方からオーナーシゲルで、さぁ、十八頭が固まった、十八頭固まったっ!

 まだ足立順平とティムトットリドルは動かない。先頭はコストラノート、そしてサダオガンバレ不気味に二番手、さらには三番手スリザリンザール、インコースにサダオガンバレ……動いた! 足立順平動いた! 淀の坂の下り! ティムトットリドルが行った! そして、その内側からデーンコマンド、メルメルモー、そして外側からはマイティスタイルも差を詰めている、さぁ、第4コーナーからまもなく直線! 三冠へ続く最後の直線! ティムトットリドル堂々と一番外へ向かった! 最後の直線、大歓声! さぁ! もうティムトットリドルが先頭に立った! ティムトットリドル先頭だ! サダオガンバレ二番手! さらには三番手から懸命にコストラノート! 独走になるのかティムトットリドル!

外からメルメルモー! しかし抜けた抜けた抜けた抜けた! ティムトットリドル! 赤褐色の馬体が弾んでいる!! ティムトットリドル先頭! これを追う者はなし! ティムトットリドルだ! そして二番手にはデーンコマンドだ! ティムトットリドルだ! これが第九代のクラシック三冠馬だ!! ティムトットリドル!! おめでとうティムトットリドル!! 見事三冠! 三冠達成!!


 三冠達成! 史上九頭目、牡馬クラシックは二〇二〇年以来、二十二年ぶりの歴史的快挙! そしていつものように、これがいつものティムトットリドル……あーっとっとっと、放心の足立順平に撫でろと言わんばかりに首を振る。これもご愛嬌です。

 こんなにかわいらしい三冠馬は初めてです。ティムトットリドルの黒い尻尾が風に揺れています。そして3000を走り切った足立順平。足立コール! 京都競馬場で足立コール。いやぁ、こんな三冠は見た事ありません。

 以前までのスタイル捨て、勝ちに貪欲な姿を見せたティムトットリドル。六万人近いお客さんも満足、馬上の足立が今、ガッツポーズ! またしても大歓声が一人と一頭を祝福します。


 そして今、地鳴りのような大歓声再び。さぁ、ティムトットリドルを迎えます。淀のスタンドのファンの皆さん。新馬戦から暴走じみた逃げを見せ、レースが終わった後も止まらないこともありました。

 まぁ、厩舎の先輩グリゼルダレジェンを優等生とするならば、言ってみれば問題の多かったこのティムトットリドルなんですが、ご覧のように勝ち戻りますはティムトットリドル、そしてその背に足立順平。

 もし、この足立順平がいなかったらティムトットリドルはもしかしたら三冠を獲っていなかったかもしれません。それほどまでのこの人馬一体の三冠です。あぁ、そして今、指を一本突き上げました、そしてティムトットリドルを讃えてくれと言わんばかり、右の一本指を手に高々と突き上げます、新たな牡馬三冠誕生の瞬間です!


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