クラブ初年度の今
ロドピスの中山大障害参戦という嬉しいやら勘弁してくれやら、非常に心がぐちゃぐちゃになる情報を受け取った小倉サマージャンプの日の翌日、俺は有給を消化していた。大塚さんにこのままだと一か月単位で休むことになりますと恐喝されたからね……
無理矢理休みを取らされた俺とは違い、もうすぐ学校生活という日常に戻る音花ちゃんたちは学校の宿題との
さて、休みと言っても大変に暇。つまりはやることなど外国で発表されたサラブレッド育成の論文を読むぐらいしかないので、引退の迫っている初年度桜花クラブ馬のレース情報でもまとめておこうか。
まず、オウカセカンド。あの違反行為により競走生命を絶たれた彼女であったが、無事にダート馬のロンダリングネームの子を着床した。珍しい配合なので将来が楽しみである。
次にオウカファースト。安田記念を完勝し、イギリスのサセックスステークスを連覇したモンスターホース。マイルの防波堤と呼ばれるようになったファーストは次走のムーラン・ド・ロンシャン賞で一足先に引退となる。最初はマロワ賞狙いだったが、中二週ではさすがに無理が来るだろうと判断したようだ。怪我なしが一番だから俺はその判断を支持する。残念だが競走生活で世界を飛び回ることが多かったからな繁殖にあがるまではゆっくりとしてほしいものだ。
三頭目はオウカサード、色ボケ両刀中距離馬。彼はイエローローズを帯同馬にし、アメリカで最後のパシフィッククラシックステークスを勝ってもらえるワンミリオン・ワイルドウエストボーナスを狙っていた。しかし、そこに好敵手のPPK、プリペリオンキラーが身体のスペックを百パーセントにして出走。単純な出力の暴力で二馬身差をつけられて敗北、二着で競走を終えた。本来、サードはここで引退のはずだったが、陣営が敗けたままで終われねぇよな! 日和ってる奴いる!? っと何故か燃えあがってしまったので現役続行。現地滞在でブリーダーズカップ・クラシックに挑むことになった。パシフィックCSがブリーダーズカップのプロップレースになっているから出走条件は満たしているので問題はない。クラブの財布以外は、であるが。
最後はオウカショート。まぁ、言うまでもないかもしれないが、去年の忘れ物を獲りにプロップであるフォワ賞からの凱旋門賞に出走予定だ。帯同馬としてエミューズが同行しているのも特筆すべきことだろう。遠征費でクラブの経理担当が悲鳴を上げていた、南無。エミューズはともかく、馬主の数が少ないショートは遠征費の足りない分をクラブが自腹切ってるからね。せめてフォワ賞は勝たないとクラブは大赤字である。もっとも、こちらはサードと違い、有馬記念で競走生活を終える予定なのできっと黒字にしてくれるだろう。してくれないと市古さん倒れちゃう。
ご覧の通り、クラブの初年度の狙いである知名度をあげるというのは達成した。あとはみんなが無事に競走生活を終え、牧場に戻ってくることを祈るだけである。
ところで、十二月に海外でのレースを無理矢理挟み込んで中山大障害の日に日本を飛び出しているなんてことはできないんだろうかなぁ。……やっぱ無理かぁ。
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