ダービー直前! 特別インタビュー! 下
丹羽:新田騎手から見て、ダービー注目の馬はいますでしょうか?
新田:マッケンオー……と言いたいところですが、彼はクラシックディスタンスの距離が持つかどうか……調教では余裕がありましたがかかるとスタミナが足りなくなる可能性もあります。まして乗り替わりなので掲示板には乗れるとは思いますが、かなり展開次第なところもあるかと。
鈴鹿:陣営なのに、んなこといっていいの~。
新田:僕乗ってたら勝つんで。
鈴鹿:ハイ大口、天王寺調教師聞いてます? 癖馬にもっと乗りたいって!
新田:やめてくださいよ!
鈴鹿:やめてくださいも失礼でしょ。(爆笑)
酒も進み鈴鹿の口が軽くなった頃合いで、丹羽は両者に最近の競馬事情を聞き出していく。
丹羽:サンブルエミューズはオークスを回避してNHKマイルに出走し、またしても二着と悔しい思いをされたと思いますが。鈴鹿さんとしては敗因はなんだと思われますか?
鈴鹿:雨。
新田:雨でしょ。
新田・鈴鹿:ねー。
丹羽:いや、他にもなにか要因があるかと……。
鈴鹿:ないね。仕上げはメイチとは言わないけど最高級だったし、なにより海老原調教師がそんな状態で出すわけがない。
新田:(田貫)健太に乗り替わってましたけど、あいつも新人とは思えないぐらいには上手に乗りますからね。雨におびえるエミューズをあれだけ走らせてたんです、上等でしょう。
丹羽:なるほど、サンブルエミューズの敵は雨だと。
鈴鹿:アイツの競争生活の全てにおいてね。
丹羽:はぁ、難儀なものですね……。そういえば、鈴鹿さん個人はレジェンの時代から預ける調教師さんは羅田調教師ですが、他の調教師に預託先を変えることはお考えに?
鈴鹿:ディア、レジェンの子供は幸永調教師の厩舎に預ける予定ですよ。クラブ馬は変わらずに羅田調教師と海老原調教師に引き続き預けるのではないでしょうかね。運営からは完全に手を引いているので確定とは言えませんが。
丹羽:あ、そうでしたね。でしたら、鈴鹿さんの観察眼で調教師さんたちのここがいいよってところを教えていただけませんか? これから馬主になろうって人も預け先の指標にできると思うのですが。
新田:いいですね。鈴鹿さんが他の先生たちのことをどう思ってるのか聞いてみたい。
鈴鹿:どうもこうも……いいでしょう。まず羅田調教師、ストレスに弱く、馬を大事にする人ですね。出走後のケアがうまく馬が事故以外で壊れることはまずない。総評すると晩成馬の育成が上手い厩舎ですね。レジェンも結果的にはなりますが彼の厩舎以外なら最後まで走りきれたかは不明です。
丹羽:褒めちぎりますね。
鈴鹿:事実を述べているだけです。次に海老原調教師、彼自身が海外のレースなどの知識も多く、腕のいい調教助手を抱えているのでワールドワイドな活躍をしたいと思うならここに預けましょう。栗東で海外狙いなら海老原調教師、この考えで間違いないです。
新田:美浦で海外狙いなら大森先生ですかね。
鈴鹿:だね。あの人は伝手が多いから海外でも受けられるケアの質が違うでしょうし。
丹羽:知識の上では理解しているんですが、そこまでケアの違いが競走に影響を?
鈴鹿:当然。競走馬、つまりサラブレッドは元来臆病な生き物です。隣に知らない人間がいれば気が立ちますし、飛行機の重低音を聞けば別の動物の鳴き声と勘違いしてストレスが溜まります。長距離輸送でゲッソリなんてことが珍しくないのはこれが原因です。その競走馬をいかに戻せるか、ケアを軽く見ると日本競馬はいつまで経っても凱旋門賞に勝つことはできませんよ。そのことを大森調教師は切実に理解していらっしゃる。
実際、他の陣営がフランス遠征をするとき、彼に手を借りることも多いのは丹羽さんもご存じでしょう?
丹羽:そうですね、遠征の際に大森さんの口利きを頼る陣営も多いと聞いています。
鈴鹿:あの人はおそらく、日本競馬が凱旋門の頂に届くことをもっとも期待している調教師なのでしょう。たとえ、自分がその栄誉を得られなくても日本が勝てばそれでいい。そういう心情なんだと思いますよ。
新田:確かに、天王寺先生と仲がいいので知ってますけど、国内戦での勝利欲求は薄いかもですね。それはそれとして強い勝たせ方するんですけど。
丹羽:はぁ、珍しい話も聞けましたが、その天王寺調教師について鈴鹿さんはどう思われてますか?
鈴鹿:女の扱いがうまい。
新田:げふっ。(爆笑)
丹羽:それ聞いていい奴です?
鈴鹿:牝馬の扱いがうまいって言ってんですよ。あとレースの選び方が俺に似てるので彼に馬を預けることはないでしょうね。
丹羽:あぁ、そういう……似ているとはいったい?
新田:栄誉じゃなくてロマンを選ぶ、でしょ。じゃなきゃグリゼルダレジェンに秋華賞か菊花賞走らせてますって。
鈴鹿:正解。息は合うけど一緒の陣営だとストッパーがいなくなるんだよなぁ。
丹羽:それは……はい、駄目でしょうね。
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