ダービー直前! 特別インタビュー! 上


 伝説の名牝の親 桜花牧場の鈴鹿オーナーに聞く

 ダービー注目馬のティムトットリドルの強さとは



丹羽早秀記者(以下丹羽):そんなわけで本日は桜花牧場の鈴鹿さんに特別インタビューをしていきたいと思います。鈴鹿さん、よろしくお願いします。


鈴鹿静時社長(以下鈴鹿):居酒屋で飲んでるときにいきなり話振ってきて特別インタビューも何もないと思うんだけど。


丹羽:ふと、ここでインタビューしたら面白いんじゃないかと思いつきまして。後でボスにページ貰いますんでお願いしますよ~。


鈴鹿:ええ……いいですけど、なに喋るんですか。


丹羽:もちろんダービーに出走するティムトットリドルに関してですよ! ズババァリ! 彼の強みとは何でしょう!?


鈴鹿:……そうですね。やはり関節の柔らかさですね、天性の柔軟性のおかげでコーナーではかなりシビアなラインつけるのは大きいです。

 あとは操作性ですかね。レジェンみたいに頭がいいわけではない、むしろアホの子よりなんですが、レース中は鞍上に逆らうことはなくパフォーマンスが機嫌に左右されることが少ないのも強みです。


 ここで丹羽と鈴鹿氏の頼んだ桜花島の新酒『花見』が届く。本来酒の季節は冬であり、誤用と間違われるかもしれないがここでは新酒と言い切らせていただく。

 丹羽と鈴鹿氏はおちょこに注がれた『花見』を一息で飲み切り、アテである桜花牛のしぐれ煮をつまみながら会話を続けた。


丹羽:実際のところ、勝率はどれぐらいと見てますか?


鈴鹿:九割方勝つでしょうね。


丹羽:と、おっしゃいますと?


鈴鹿:そうですね……今年もダービーは二回東京の最終日なのでCコース。内の仮柵が外目に広がるコースで、一周が長くなりコースの横幅が減ります。Aコースから比べると六メートルの減少。つまり、差し馬などは前が詰まると抜きにくくなり、逃げのリドルには有利に働きやすいことが一点。

 確かにダービーでは逃げ馬が勝つことは稀ですが、リドルの隔絶した逃げ足とタフネスがあれば逃げ切りも不可能じゃない……むしろハイペースですりつぶせると思いますよ。


丹羽:それは……結構重要な作戦内容だと思うのですが聞いてもよろしかったのですか?


鈴鹿:知ってどうするんです? リドルのスタートはピカイチ、そう仕込みましたからね。前を潰せる逃げ馬は出走していない。他のジョッキーが仕掛けどころを誤らなくともそうそう一着を譲ることはないと、正直言いきれますよ。


丹羽:凄い自信ですね。


鈴鹿:これは余裕というものです。実際、他の陣営は悩んでいるでしょう。逃げ戦法を試す馬もいるかもしれません。リドルのスタミナは優に14ハロンは持つので垂れるのを待つのも難しいですから、競り合うほうが勝機があると見てもおかしくないですしね。


丹羽:なるほど。対戦相手で怖い馬はいますか?


鈴鹿:スーパーフラッシュですかね。いい末脚持ってますよね、鞍上がロメール騎手というのも怖いところ。それ以外の注目馬は……


 ここで居酒屋の扉が開き、店主のいらっしゃいの声にどうもと返事が。そちらを見るとなんと新田良治ジョッキーが。


新田良治騎手(以下新田):どもども。


鈴鹿:あ、斜行で騎乗停止二日でダービーに乗れなかった新田騎手だ。


新田:うわ、わざとらしい。さっきまで一緒に牧場いたでしょうに。


鈴鹿:(酔っぱらいの発する下品な笑い)


丹羽・新田:うわ。


丹羽:どっからそんな声出してるんですか。(笑い)


新田:好青年の化けの皮が剥がれてますよ。(笑い)


鈴鹿:いーのーいーの、マッケンオー乗りたかったね新田君!(品性のない笑い)


新田:はい、戦争ですよこれは。(笑顔で拳を握る)


店主:はいはい、新田さん落ち着いて。喧嘩鍋ができましたよ。


 じゃれあいで拳を握る新田に店主が横肘代わりに喧嘩鍋、桜花島の地元鍋ともいうべき底面に野菜とキノコを敷き詰めて牛・豚・鶏・鹿・猪の五種類の肉を醤油ベースで煮込んだ鍋、をテーブルのカセットコンロの上に着座させる。


(添付された土鍋に盛られた喧嘩鍋の写真)


新田:うわ、美味しそう。


丹羽:酒が進みそうですねぇ。


 :後半へ続く


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