不意にはじまるクイズ王
「クイズ王は誰だ! 競馬クイズ王選手け~ん!」
いえーいっと音花ちゃんとほむらちゃんがパチパチと拍手をし、山田君がカメラの向こうから俺に拍手を催促する。
柴田さんの弟の開業に関しては大塚さんにサポートをお任せしており、俺の手は割と空いている状況ではあるがいきなりWeTubeの撮影に借り出すとは何事か。なんなら八時過ぎだぞ今。俺は残業したくないんだけど。
「お待たせしました!」
「待ってないが」
「待望の新企画!」
「広報助手君たちに企画会議で落ちたの無理やり通したって聞いたが」
「今宵競馬クイズ王を決めましょう!」
「流石に高校生二人に俺が負けるわけないんだが……」
ツッコミどころ多くね? 海外レースまで詳しい俺相手じゃ音花ちゃんほむらちゃんコンビじゃ分が悪いぞ。
脳死で思ったことを口から垂れ流していると、山田君がチッチッチと指を振って意味ありげに笑う。どうでもいいけどカメラ裏にいるから俺らにしか見えてないぞ。
「当然彼女たちに勝ち目はないので! 特別ゲストがいらっしゃってます! どうぞ! 沼付騎手です!」
「どもどもー! お邪魔します!」
何してるんですか沼付さん……。高校生組の二人は滅茶苦茶嬉しそうだけど。栗東のリーディングジョッキーだもんね、騎手志望の二人からしたら雲の上の人だ。
それはともかくとして、平日の八時過ぎにこんなところにいていい人ではない。山田君無理言ってないかこれ?
「沼付さん迷惑じゃない? 山田君に無理やり連れてこられて迷惑かけたなら、ボートに山田君括りつけて港から今津海岸に向けて流すけど」
「大丈夫です! 大丈夫ですから! 山田さんに対してだけ当たり強くないですか鈴鹿さん!」
「俺が手を出すより死なないと思う」
「社長はイノシシを百メートル近く投げ飛ばしてましたからね!」
「被害受けるの自分なのになんで自慢げなんだろう……」
「音花、鈴鹿さんと山田さんはネジが外れてるから軽く流せって沙也加さんから言われてるでしょ」
「そうだった」
二人とも大塚さんから処世術を伝授されてるじゃん。別に否定しないけどさー。
「ということで! 沼付さんと高校生二人組対社長の変則三対一のクイズバトルになります! 問題は全二十問ですので頑張ってください!」
沼付さんが音花ちゃんとほむらちゃんの間真ん中に座り、会議室は俺と三人と山田君のトライアングルができる形になった。
会議室で撮影しているんだが、なんか三人組のところだけ華があるなぁ。俺もレジェンのぬいぐるみを目の前に置いとこ。競馬協会の人から新商品のプロトタイプをもらったんだ。
「さぁ、レジェンのぬいぐるみも社長の応援に来たことで! 第一問! お手元に用意したフリップに記入をお願いしますね。
日本の国際競争、G1ですね。芝のG1において出走距離が存在しないのは次のうちどれでしょう! 1600メートル、1800メートル、2000メートル、2200メートル、2400メートル、2500メートル。お書きください!」
フリップ代わりのスケッチブックを手に取って黒マジックで記入していく。
「最初だからか簡単だね」
「そうですね、俺が口出しちゃうとアレなんで音花ちゃん書いてくれる?」
「わかりました!」
沼付さんの後ろに座っていた音花ちゃんがフリップを受け取り記入を始めた。
ちょっとでも競馬に携わっていたらわかる問題だもんね。
「お二方、回答完了ということで! ひっくり返してください、どうぞ!」
俺の回答は1800メートル、音花ちゃんも同じだ。
「お見事! 両方とも正解です! 1800メートルはG2までしかございません!」
ちなみに根幹距離(四百の倍数)以外の距離の芝G1は宝塚、菊花、エリ女、有馬しかない。ダートG1だとチャンピオンズカップが1800メートルで存在する。
「それでは第二問! あ、忘れてました。今回罰ゲームあります」
「先に言え!」
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