ロンシャン競馬場、右回り、2400メートル、第121回凱旋門賞
『今日、十月五日は日本の競馬にとって記念すべき日です。七十三年前の一九六九年十月五日。世界の頂点を目指す挑戦の始まり。『いつかきっと』の遥かなる夢は、『今度こそは』の期待に代わっています。
第121回目の凱旋門賞は十八頭立て。その中の唯一の日本馬、オウカショートはゼッケン7番の14番ゲートからスタートします。
各場順調に収まり、スタートの時が迫ってきました。世界一美しい競馬場で行われる世界最高峰のレース、第121回凱旋門賞、爽やかなパリの青空の下、我らが代表オウカショートがゲートに入りました。
世界中のホースマンにとっての最高の晴れ舞台に日本の夢を乗せてオウカショートが挑みます。
日本の馬が初めて凱旋門賞に挑戦したのは今から七十三年前、以来のべ三十頭を超える馬が挑んでは涙を呑んできました。
あの漆黒の衝撃ですら越える事が出来なかった高い高い壁。しかし今日このオウカショートが歴史を変えてくれるかもしれません。
名前に日本の国花を背負い、生まれた牧場では新たな伝説を築いたグリゼルダレジェンが見守っているでしょう。ご覧のように鞍上フランスの馬場をよく知るロメールを背に今ゆったりと面持ちでスタートを待っております。
さぁ、まもなくゲートインが終わります。
日本のホースマンの夢を乗せて今オウカショートが飛び出しました! 大歓声がブローニュの森に吸い込まれていきます。
オウカショート、悪くないスタートを決めています。
外側から二番目の緑と黒の帽子にご注目ください、あれが日本のオウカショートです。
さぁ、まずは先行争いです!
内からムラッハ、そしてドゥイットユアセルフが出て行って、さらにはニルズヘッグも出て行きました。
日本のオウカショート、前半をどう力を抜いて行くかこれがレースの一つのポイントです。
これから高低差は10メートル、緩やかで長い長い坂を登って参ります。オウカショートは現在後ろから二頭目、ロメールは後ろから二番手を選択しました。
先頭はムラッハ、二番手の位置にはトットマリンバ、さらには三番手から上がってくるのがウィリアムテル、冬支度を始めた木々の脇を抜けて十八頭が駆け抜けていきます。オウカショートは後ろから変わらずに二頭目。そして中団の位置取りですが黄色い帽子のヘブンリーラブが見えました。さらにはドールスター、外の方からグランニョギルが続いています。
先頭が坂を登り切り、ここからは坂の頂上。10メートルの一番高い所を登り切って急な下り坂が待っています。
先頭はムラッハ1馬身半のリード、二番手にウィリアムテル、三番手の位置からトットマリンバ、そしてインコースからシーレギオンが続いて、オウカショートは相変わらず後ろから二頭目から三頭目といったところ。
オウカショートは相変わらず後ろ目で続いています。後ろからの二頭目の緑と黒の帽子にご注目ください。
さぁ、第3コーナーの坂の下り! 先頭ムラッハ、リードが2馬身半から3馬身だ。二番手の位置に内の方からウィリアムテル、さらに三番手トットマリンバ、内の方からドールスター、ニルズヘッグは中団よりやや前目のポジション、オウカショートはまだ後ろから三頭目。
各馬がフォルスストレートに掛かってきました、ロンシャン名物の『偽りの直線≪フォルスストレート≫』、まだ我慢しなくてはならない偽りの直線です。オウカショートは我慢している、ロメールは我慢させています。
先頭はムラッハ、オウカショートはまだ耐える。
さぁ! 最後の直線、最終直線に各馬が入ってきます! 行け! オウカショート! 日本の夢を乗せて! 残り530メートルだ!
先頭はこの辺りで替わっているか、ドゥイットユアセルフが先頭か、ドゥイットユアセルフ先頭! いやシーレギオンか! そして外から栗毛の馬体! 日本のオウカショート外から強襲! 外からオウカショートが先頭に替わった!
残り300メートル! オウカショート先頭だ! 内からムラッハ! 残り200メートル! 依然先頭はオウカショートだ!
日本悲願の栄光まで残り200メートル! 先頭はオウカショート! しかし外からもう一頭怖い馬が来ている! シーレギオン猛追だ!
先頭はオウカショート! 勝てるかどうか! 外からシーレギオンが迫ってくる!
オウカショートか! シーレギオンか! 僅かに交わされたか!! 僅かに僅かに交わされたかァーッ!
日本の夢がゴール直前で丸呑みにされました! 最後の最後シーレギオンに交わされました! オウカショート無念の二着!
ゴール直前まで日本は夢を見ました。残り50メートル、勝利を半分確信しました!
しかし外から一頭、仏国のシーレギオン! 奇しくも牝馬がオウカショートを交わしていきました! これが凱旋門賞です!! これが世界の高い壁! 最後はアタマ差! 日本でもお馴染み、オリバー・ペリル騎乗の仏国のシーレギオン! 最後オウカショートの前に立ちはだかったのは仏国の牝馬でした!』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます