ウィナーズ競馬ケンタッキーダービー特別編前編
「どうもこんばんは! 内藤浩二です!」
「こんばんは、桜花牧場社長の鈴鹿静時です」
「今回はウィナーズ競馬特別編! ケンタッキーダービーを中継しつつ、出走するオウカサードの馬主である鈴鹿さんをお迎えしております。
鈴鹿さんにライバル馬の選評もお願いしつつ、皆さんも一緒に応援しましょう!」
俺はテレビ局で行われる生放送に出演している。
眠い、時差の関係で日付を越えての生放送だからな。ちなみにアナウンサーの林さんは別の仕事とブッキングしているため、俺と内藤さんの二人だ。むさい。
「早速ですが鈴鹿さん、今回のケンタッキーダービーの有力馬はどの馬でしょう?」
「エクステリオンブルバとPPKがやはり強いですね。特にPPK、ウッドメモリアルステークスのレコード馬ってのは伊達じゃないです」
「すみません、PPKというのは?」
「ああ、失礼。プリペリオンキラーのことです。ホープフルステークス、ここで言うレースはサラトガ競技場のG1ですね。距離はクレーダートの7ハロンです。
続いてレムセンステークス、グレードこそG2ですがブリーダーズカップジュベナイルの不参戦組がたびたび参戦するので、同競争で勝つのは名馬の仲間入りの第一歩目と考えるオーナーも多くいます。
名前と一緒で彼のオーナーも同世代で最強だと誇示したいみたいですね。
いやはや、大胆不敵です」
「名前とは? 意味があるんですか?」
「ええ、プリペリオンキラー。語源はプリ、ペイド、キラー。
つまり、前払いで高値取引された馬を薙ぎ払うものって意味でつけられてるんです。
彼は零細牧場生まれの恵まれない血統でね、走るかどうかも分からないってんで安値で売られていたのを今のオーナーさんが購入したんです」
「そうなんですね、一体いくらだったんですかね?」
「聞いて驚いてください。百万です、日本円でですよ」
「やっす!」
「内藤さんにお譲りした桜花牧場の仔馬よりも安いです。
もちろん理由がありますよ、彼は生まれたときから股関節に異常がありましてね。生産者の方は安値で売りに出して売れなければ潰すと考えていたようです。
しかし、彼はオーナーに買われて栄光を手にした。ロマンですねぇ」
「アナタがそれをいうんですか」
「ははは、レジェンも零細血統ですね。こりゃ失礼」
「くぅー! にくたらしー! でもやっぱ馬主っていいですね!」
「内藤さんも今年から馬主ですから、是非ともこの気持ちを味わってください。
あ、巻きの指示が入りましたよ」
「鈴鹿さんそれ言っちゃダメです! あ、一旦CMでーす」
ーーーーーーーーーーーーー
「CM五分でーす!」
「お疲れース! 鈴鹿さんと内藤さん! こっから出走までCMないんでトイレ言っといてくださーい!」
「はーい」
「行きましょう鈴鹿さん」
席から立ってスタジオから出てトイレに向かう。
道すがら内藤さんが俺に聞いてきた。
「サードは勝てそうですか?」
「無理でしょうね」
「え!?」
驚愕のあまり、内藤さんが立ち止まる。
「勝てないんですか!?」
「内藤さん、トイレ行かないと」
「そうじゃなくて!」
「はいはい、CM明けたら教えてあげますから」
「約束ですよ! さっさと出しましょう!」
俺大きいのしたいんだけどなぁ。
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