ウィナーズ競馬ケンタッキーダービー特別編後編
「はい、CM明けました。鈴鹿さん吐いてください、ほらほら。
あ、さっき二人でトイレに行ってきたんですが鈴鹿さんがテレビ映えすることおっしゃってましてね」
「サードが勝つのは難しいって言っただけじゃないですか」
「そうそれ! それですよ! なんで難しいんですか?」
「それでは簡単にお答えしましょう」
「簡単にじゃなくて詳しくお願いしますよ! こんな深夜なのに視聴率十パー越えてるんですから! みんなサードを応援してるんですよ!」
いつになく熱いな内藤さん。
後ろにホワイトボードを用意してもらって、キュポっとペンのキャップを外し、そのままボードに楕円形を書く。
ついでに右上にチャーチルダウンズと記載する。
「よろしいですか? ケンタッキーダービーはアメリカのケンタッキー州のチャーチルダウンズ競馬場で行われます。
1875年5月の開場と共に第1回のダービーとオークスが行われ、戦争や疫病の流行が起こっても中止されることはなく毎年開催されています。これはアメリカのスポーツイベントで最長の記録なんですよ。
閑話休題、そんなチャーチルダウンズはアメリカの象徴とも言うべき競馬場で日本や諸外国の馬は勝ちづらくなっているんです。何故だかわかりますか内藤さん?」
「え!? やっぱ地元だから応援が多いから…とか?」
「それもあるでしょうね。しかし、決定的な差はコレです!」
赤ペンで黒の楕円の外周を囲う。
「コレ、なんだかわかります?」
「外周だから、ダートですよね?」
「イエス! その通り!
ダートが問題なんですよ! はい、町下さん! アメリカのダートは一体どのようなものですか!」
「鈴鹿さん画面の外の放送作家に振らないでください! 町下さんもカンペで答えないの」
「はい、正解です。町下さんの答えはアメリカのダートはクレーとのことです。はい、その通り。日本の砂のダートと違い、いわゆる本当の赤土です。
なので、日本の芝と同じような速度が出るんですね。これがどうなるかと言うと」
ホワイトボードにハイペースと書き、外周に長さを書き足していく。
「ケンタッキーダービーのレース開始直後の最初のホームストレッチは450メートル、つまり初速がかなり付きます。
そのままぐるりと回って、最終直線からウイニングポストに入るまでの直線は約380メートル! はい、内藤さん! つまり有利な脚質は?」
「ええっ!? あー、あー? わかんないですよ!」
「答えは先行馬なんですよ! PPKは先行馬! ここでかなりの不利が付いています! なにせサードは差し馬ですから! 付け加えておくとエクステリオンブルバは追い馬なので彼も不利ですね。
結果としてPPKは追い風に追い風を受けている正に無敵状態! うーん! これは厳しい!」
ペンにキャップを被せ、席に着く。
「なので、サードが勝つのは厳しいということですね。
それに加えて屋根、騎手も相手はアメリカで指折りのジョッキー。対してこちらは一流と言っても腕は数段落ちます。
逆に返すと、ケンタッキーダービーで勝つことができれば、それはジョッキーの腕と言うことです。勝率で言えば勝ち目は薄いですが、掲示板に入るのは。まぁ、間違いないでしょうね」
「はー、なるほど。例えば、例えばですよ? 勝てるとすればどのようなレース展開になるでしょう」
「うーん、サードは不器用ですからね。差し以外の脚質は追いが多少出来る程度なので難しいですが…。
私ならロケットスタートを切って逃げの位置に入ってペースを握り、そのままスローペースに落とし込んでバックストレッチに入ったら位置を下げて最終直線で勝負を賭ける。こんなところですかね。
ただ、PPKは逃げもできるので作戦を読まれるとキツいですね。こちらはスローに持ち込まないといけませんが相手はとにかくハイペースを維持すればいい。
吉騎手が乗ってくれればなぁ」
吉騎手はNHKマイルにお手馬が出走するので騎乗を辞退された。
あの鞭捌きで馬群操作してくれれば勝てる作戦が立てられるのになぁ。
「あ、そろそろ出走みたいです」
「はいはい、それじゃあアメリカのジョッキーのお手並み拝見と行きましょう」
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