38組のローテーション話

 夏も終わり九月末、オウカサードも治療が完了し再び走れるようになった。

 そこで、市古さんとクラブの事務所で次の出走ローテーションについて話すことになった。羅田さんと海老原のオッサンもウェブカメラを使っての参加となる。


「私としては順調に三頭勝ち上がり、勢いそのままに重賞を狙いたいのですが」


『まだ慣れてなかったのか三頭とも走り終わったあとはかなり疲弊してましたからね…。一月半休み、身体もの心も回復したので選択肢としては全然ありですね』


『オウカサードも経過は良好だ。むしろガレ気味だった身体がデカくなったからプラスかもしれん。とりあえずサードは中京の未勝利2000に出走させようと思ってる。いいかな市古のアンちゃん』


「ええ、同じ距離ですし、前回の走りを見る限り次は勝てるでしょうから」


「そうだね、十一頭立てと参戦馬は増えたがあの走りなら文句なしで勝てるんじゃないかな」


『それは俺も同意する。じゃあ出走届を出しておく。ショートのほうは十月のオープン戦に出して京都2歳を狙おうと思っている』


 この前の顔合わせの時に言った新馬、オープン、京都2歳、ホープフルの流れでいくつもりだな。オープンか京都2歳どちらを落としてもギリギリ取得賞金的にはホープフルは出走できそうか。状況によるかな? 例年通りなら定員割れするから行けるだろうが、もしものために念頭に置いておこう。サブプランに関して俺が聞いておくべきか。市古さんは負けを知らんからな。


「もしオープンか京都2歳を片方、もしくは両方落とした場合にホープフルへ出走できなかった時はどうする御積もりで?」


『ホープフルが無理だったら京成杯に出そうと思っている。だが、後で言おうと思ったがそれは提案しようと考えていたサードのローテーションにぶつかる形になるな』


「なるほど、お続けください」


『あいよ。サードは未勝利から勝った場合は東スポ杯に挑もうと思ってる。あいつの適距離は1800から2200ぐらいだからな』


「一勝だけでいけるものなんですか?」


 市古さんが疑問に思うのも無理はない。仮にも重賞だからね。


「2歳で中距離の路線はフルゲートになりにくいんだよ。早熟馬でもない限りスタミナがついてこないからね」


『加えて東スポ杯は十一月中旬、ホープフルまで一か月半しかないからな。2000メートルを走り切った2歳馬がダメージを抜け切れるとは思えんし、あえて東スポ杯に出すぐらいならホープフルに出すだろうな』


 そう、それが一番大きい。おそらく定員割れするだろうホープフルに出走したほうが賞金も高いし名も売れる。


「そうなんですね…。学ぶことが多いです」


「まぁ、俺がいるからゆっくりでいいよ」


 覚えること多いし、ちょくちょくルールとかレース内容とか変わるしね。


「ありがとうございます。それでは羅田先生もローテーションを教えていただけますでしょうか」


 市古さんが今の会話をメモをして羅田さんに話を促す。


『まず、オウカセカンドから行かせていただきます。新馬戦を勝利したのでサウジアラビアロイヤルカップに挑もうかと』


「ローテとしては新馬、サウジアラビアRC、阪神JFかな?」


『ええ、セカンドは頑張りすぎる馬みたいなのでスパンを大きくとったほうがよさそうです。四頭の中で唯一の牝馬ですから是非阪神JFを取っておきたいですから無理はしないこれが最善かと思います』


 いいローテだ。


「なるほど、グリゼルダレジェンの再来として煽れますね。会報誌も盛り上がりそうなので問題ありません」


 流石にその名前は重くないかい?


『やめたほうが…。いえ、オウカファーストはこのままデイリー杯を狙おうと思います。1800はまだ身体に負担がかかるみたいなので』


「血筋的には晩成馬ですからねぇ」


『はい。そしてそのまま朝日フューチュリティステークスに進みます。よろしいですか?』


「お任せします」


 メモを取るのに一生懸命だから返答がおざなりだ。


「市古さん、とりあえずこれは全部理想通りの形になった場合だからね? 全頭負けてクラシックに乗れないなんての普通にあるから会報誌には書きすぎないように」


「あ、はいわかりました。注意を払って書きます」


 大丈夫かな…。 



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