『タラゲーム』の集い
この頃のヴィオラは、「自分とは何か」を考えては思考を停止することを繰り返していた。
何かを深く考えるには、まだ体力が戻っておらず、それでも何か見つけなければ元気も出ないような気持ちになり焦りが募る。
ゲームの世界に生きていると気がついて、自分のやるべき事を彼女なりに必死で探してきたが、自分では特に何もしないうちになんとなく全てがうまく行き、スィートピー王女に特殊能力を「複写」したことで、役目が終わったような気がして、ぼんやりと気が抜けていた。
終わってみれば、自分はさほどこの世界の役に立っておらず、世界を救うのだと頑張る自分へのご褒美かと思われたキラキラした時間も、その想いも失った。
大切な家族に心配をかけない為にも、早く元気にならなければと思う一方で、「今となってはこのまま消えても構わない」と言う、なげやりな気持ちが心のどこかにあることが、「私は、なんて自分勝手で無責任なのだろう。」と彼女に追い討ちをかけ、苦しめていた。
ヴィオラの存在は、家族にとって間違いなく大きいものだった。
両親にとっては、三人の子どもたちはそれぞれに頼りになり、手がかかり、愛しい存在だ。
誰がいるから誰がいらない。
役に立つから愛している。
そういうものではない。
特にルチェドラトにとって、妹は幼い頃から何よりも大切な存在であり、絶対に失うような事があってはならないものだった。
彼の行動の全てはヴィオラの為と言っても過言では無いし、出来ることならずっと妹にはりついていたかった。
そうしないのは、やはりヴィオラの為に、『理想の王太子』として『頼れる兄』として存在する為だ。
ルチェドラトは、もうヴィオラがセヤに戻ることには絶対に反対だった。
妹は、ここにいれば体調を崩すこともなかったはずだ。
だが、そのヴィオラが急に元気になって驚くべき事を言い出した。
「お兄様。そろそろお妃様を探さなくてはいけませんわね。」
ルチェドラトは、『バーモントの庭』の小さな家で、絶句した。
今日もヴィオラと二人、穏やかにお茶を楽しむ幸せな時間を過ごそうと寛いでいたが、妹の口から出た言葉で、時間も思考も突然ピタリと止まった気がした。
「……。」
楽しげな妹を前に言葉が出てこなかった。
「お兄様には幸せになっていただきたいから、私に考えがありますの。」
「え…。ヴィオラは、僕に結婚させたいの?」
「あら、お兄様。ただ結婚していただきたいのではなくて、誰よりも幸せになっていただきたいの。」
「……。僕はまだ結婚するつもりは…。」
「ええ。わかっておりますわ。私が学園を卒業するまではご結婚なさらないおつもりなんでしょう?お母様がおっしゃっていたもの。」
「いや…。」
「ですから、私いいことを考えましたの。お兄様に幸せになっていただくためには、お妃になられる方のことをよくお知りになってからがよろしいと思うんです。幸い、タラはとても豊かになって、お兄様ご自身がお好きな方であれば、どなたとでもご結婚していただける状況だと聞いています。もちろん私は、お兄様が好きになられた方なら、どんな方だって好きになると思いますが、何より、お兄様がまずその方のことをよく知って好きにならなければ…。」
ルチェドラトはあまりの衝撃で、もう何も言えなくなった。
笑っていてもどこか元気のなかった妹が、自分の結婚話でウキウキと楽しそうにしている。
切ない気持ちの方が勝っているが、こんなに楽しそうな妹を見たのは久しぶりだ。
ルチェドラトは、ひとまず今は、否定するのを諦めた。
「うん…。それで…?」
ヴィオラは、ニコニコしながら一旦席を立ち、何かを持って戻ってくるとルチェドラトの横に立った。
「お兄様!『タラゲーム』ですわ!『タラゲーム』で対戦なさるんです!いかにもお見合いと言ったようなものはお嫌なのでしょう?ですから、年頃のご令嬢をお一人ずつお招きして『タラゲーム』をなさるとよろしいと思うの。」
「……。」
「お兄様おっしゃっていたじゃない。ゲームの遊び方で、なんとなくお相手のお人柄がわかるって。」
「…そう…?だっけ…。」
「そうですよ!例えば、じっくり考えるタイプの方、勝負になると冷静さを失う方、こちらを勝たせて喜ばせてやろうと言うお考えの方。ほら…、遊び方や…、勝った時のご様子、負けた時のご様子なんかで色んな事がわかるって…。私のことは、途中まで一生懸命考えているけれど、混乱してきて諦めるタイプだなんておっしゃって…。」
「ああ…。」
ルチェドラトはやっとここで笑顔を見せた。
「ですから、この『タラゲーム』で色んな方と対戦なさるの!最初は気に入った方がいらっしゃらなくても、何度も対戦するうちに、ふと素敵な一面をご覧になることもあると思うんです。」
「何度も…。」
「ええ。でも最初は一対一だと皆様も緊張なさるし、お兄様もご興味がない方とまで対戦なさるほどお暇ではないから、まずは男女問わず一度にお呼びしましょうよ。大広間にたくさんの対戦テーブルを準備して、ゲームの経験がある方もない方も楽しめるようにレベル別に対戦表なんかも作ったりして…、あとは、お茶や軽食も。お兄様にご希望がなければ、お父様やお母様にもどなたをご招待すべきか伺って…。私も皆様と対戦したり見学したりしながら、素敵な方を見つけたら推薦しますわ。」
「……。」
――どうしてそんなにやる気なんだ…。
「私、先日、少なくとも一月いっぱいはタラでゆっくりするように言われてしまって…。もちろん王宮から出ることは許してもらえないし…。それで、先日お母様がお話なさっていたのを思い出したの。そろそろお兄様のお妃候補を探さなくてはならないけれど、お兄様がお妃探しの舞踏会もお茶会もなさりたがらないって。だから、私が退屈しているから皆様にお集まり頂きたいってことになさったらどうかと思って…。いかが?これなら私も少しは役に立つのではないかしらと思って…。」
――母上…。なんてことを…。
珍しく、ポカンとした表情でヴィオラを見上げていたルチェドラトは、頭を抱えた。
「お兄様。もし…、万が一…、何度対戦しても気になる方が見つからなかったとしても…、無駄にはならないと思いますの…。皆様にとっても出会いの場になるでしょうし、それに将来、お兄様のお友だちの奥さまになられる方もきっといらっしゃるわ。その方が、どんな方だったかをお兄様が知っていることも、きっと何かの役に立ちますわ…。だって、タラの貴族のご子息やご令嬢の皆様は、将来お兄様を助けてくださる大切な方々ですもの。」
ルチェドラトは、「役に立ちたい。」とワクワクしている妹を眺めながら、複雑な思いで目を伏せた。
「私、秋の舞踏会では全くお役に立てませんでしたでしょう?でもこの寒い一月にこのような催しを開けば、皆様の退屈しのぎになると思いますし、私にとってもお勉強になるし、お兄様と貴族の皆様との親睦を深めるきっかけになればそれこそ最高なのではないかと思って…。寒い時期は、私でなくとも皆様もお出掛けがなかなか難しいでしょうから娯楽になるかなと思うんです。」
――まぁ……。露骨なお見合いよりは…いいか…。ヴィオラが楽しそうだし…。
ルチェドラトは、全然乗り気ではなかったが、ため息をついて妹に微笑んだ。
急に元気が出てきた娘から、この話を聞いた母は、大いに乗り気だった。
とにかく、貴族の子女と親睦を深めることはヴィオラにとっても有益だし、兄のお見合いに反対だと思っていた娘が、こんなに一生懸命やる気を見せているのも微笑ましい。
何より、もう全然やる気のない息子に、タラのご令嬢と触れあう機会を作ることが出来ることはとにかく有難い。
それに、ヴィオラが言うような集まりなら、親と一緒に出席する晩餐会や舞踏会では見られない貴族の子女の様子を見られることもあるだろう。
普段はお行儀がよさそうに見えるが、同年代ばかりの男女が集まった時に同じようにお行儀がよいとは限らない。
逆に普段は大人しく見えるようなご令嬢も友人と一緒の時には溌剌とした様子を見せたり、きっとよいところも悪いところもたくさんの情報が得られるに違いない。
ふだん王宮で働く見慣れた貴族のご令嬢も、そうでないご令嬢もたくさん観てみたい。
ヴィオラにとっても、ルチェドラトにとってもきっと得るものが多いはず。
友人の息子や娘の将来の伴侶も、息子の友人たちの将来の花嫁をも見つける機会にもなるに違いない。
――ああ、なんだかとっても楽しくなりそう…。
人々の恋愛模様が大好物の王妃は、娘の持ってきたこの話が、いいこと尽くめの宝箱のように思えた。
「お母様、賛成してくださる?」
「ベルちゃん!もちろんよ。お母様、大賛成だわ!」
「まぁ!よかった!では、お母様。私にいくつかアイディアがあるの。聞いてくださる?お兄様ったら全然身を入れて聞いてくださらないのよ。出席はしてくださるおつもりみたいだけれど、すぐに違う話をなさろうとするの。」
「あら、ルチェは…出席するならそれでいいわ。色々相談して出席しないなんて言われては困るもの。私達で考えましょう!」
「そうか…。そうですね。あ、あと、ルイも出席させてよろしい?あの子ゲームが得意だし、ゲームをしたことのないご令嬢にルールやコツを教えてほしくて…。」
「まぁ…ルイを…?でもそれはお父様に聞いてみないと…。」
「そうよね…。でも、たった一日だけだから…。」
「…!ベルちゃん!一日だけなんてもったいないわ!何日もやりましょうよ。」
「お母様!すごいわ!それなら最終日には大会も出来るわね!」
「大会?ああ、ゲームのね。そうね。ゲームね。それはベルちゃんに任せるわ。」
「何日も王宮に来るとなると…皆様の負担になってしまってはいけないから、ドレスコードを決めましょうよ。なるべく普段着でお越しくださいって。私もお庭を歩くような服で出席するわ。」
「普段着で…?それも…面白そうねぇ。確かに毎回着飾らないといけないご令嬢は大変だもの。それで出席率が下がるのは困るものね。」
「でも、やっぱり皆様おめかししたいと思うからお母様のところにいらっしゃるご令嬢達にその辺りを説明しておいてくださらない?その方々が広めてくだされば心強いわ。本当に普段着で、家でお茶を飲む
「そうね。普段着を観るのもいいわね…。新しいドレスを作るのを禁止して、それでも作ってくる方がどれだけいらっしゃるか…。」
「お母様ったらそんな風に厳しくチェックなさらないで。たまたま普段着のドレスが出来上がったばかりの方だっていらっしゃるはずよ。」
「あら…。ベルちゃんは優しいのね。」
二人の思惑は、重なったり大きく外れたりしながらも、『タラゲームの集い』について大いに話し合った。
父は娘が元気よく説明するとこう言った。
「ふぅん。いいんじゃないか?それにしても、ずいぶん詳しく決めたな。ヴィオラはこういうことを企画するのが得意らしい。」
ヴィオラは、嬉しさに顔を紅潮させた。
「そうかしら…。」
「うん。良くできてる…。」
悩みに悩んでいた「自分とは何か」「自分も何かの役に立ちたい」と言う難しそうに思えたものが、父に褒められた今、驚くほど晴れやかに自分の中に一すじの光となって見えた気がした。
難しいことではなく、自分に出来ることで、なおかつ誰かを楽しくすること。
ひとまず、そんなことから始めてみようと思って口に出してみたことが、思いのほか自分を前進させた。
あっという間に、タラ国の貴族の子女宛に「王妃とヴィオラ王女連名」で、『タラゲームの集い』と言う初めてづくしの招待状が届けられた。
『タラゲーム』は、昨年のヴィオラの成人式から国中で大人気ゲームとなっていて知らない者はいなかったが、王宮で同じ年頃の者ばかりが集まることも初めてなら、普段着で来るように指示があることも初めてだ。
しかも、その期間は二週間。
二週間のうちに五回も王宮に行くチャンスがあり、何回行っても構わず『タラゲーム』が苦手でも丁寧に教えて貰えるそうだし、対戦成績によって級や段と言った称号か与えられるとある。なんだかよくわからないが、王家からの称号であれば授かっておくに越したことはない。
王宮には続々と出席の連絡が舞い込んだ。
会場では、王太子の側近ダンテ達が控える総合受付で渡された簡単なアンケートに答え、ゲームの遊び方とルールが書かれたもの、そして対戦相手と対戦成績を書き込む表を受けとる。
総合受付に控える者たちにより、対戦相手が決められると、さっそくゲームが始まった。
舞踏会でも茶会でもなく本当にただゲームをするために広間に整えられたテーブル。
ゲームをしたことのない者たちは一回戦目は、対戦テーブルの周りに置かれた椅子に座ってゲームを見守る。
会場には、可愛いルイ王子も現れ、したり顔で初心者に教え始めた。
勝負がつくと、ダンテのもとへ行き、対戦表の勝者の欄に印が押される。
この印が貯まると、級が上がっていくと言うものだ。
ゲームが終われば対戦中のテーブルを観に行ったり、お茶を飲んだりしてしばし寛ぐ。
次々とゲームをしたい者は、総合受付でどんどん対戦相手を決めて貰い、印を増やしていく。
「これは…。面白いかもしれない…。」
多くの者がそれぞれに楽しんだ。
次の開催日も出席率が高いことを知ったヴィオラは、喜んだ。
でも、三日目になっても兄は全然対戦せず、友人の対戦を見守るばかり。
ヴィオラは総合受付に抗議しに行った。
「ダンテ。どうしてお兄様は対戦なさらないの?対戦相手をダンテが決めて頂戴よ。」
王妃からも似たような抗議を受けていたダンテは落ちつき払っていた。
「ヴィオラ様。ルチェドラト様は大変お強いので、今回はどなたとも対戦なさいません。おそらくこの国中でルチェドラト様と善戦できるのは私くらいなものかと…。」
「まぁ…!」
「でも…、これでは…。」
男女でほどほどに交流がなされているが、ルチェドラトはいつでも友人の近くにいて、ご令嬢と話している様子がない。
「ヴィオラ様。今回はあくまでも『タラゲームの集い』でございますゆえ…。」
ヴィオラは、憎たらしいダンテを見つめるばかりで、彼を動かせるだけの言葉が見つからなかった。
「お姉さま。何なさっているの?僕と対戦しようよ。」
ルチェドラトによって差し向けられた可愛いルイにせがまれたヴィオラは、弟がルチェドラトの手先とも知らず、可愛い弟と対戦するために総合受付から離れた。
「ヴィオラ様。
「本当にルイ王子はお強いんですね。」
「まさか最後にあんな風に逆転できるものとは…。」
最後の最後でルイに大逆転されたヴィオラは、恥ずかしくて仕方がなかった。
どうしてこんなに可愛いルイがこんなに意地悪な勝ちかたするのかしら…。
でも、十歳以上下の弟に負けて不機嫌になるわけにもいかないわ。
ヴィオラは、なんでもないと言うようにスンと微笑んだ。
くるくると表情を変えるヴィオラの悔しさも恥ずかしさもよくわかる観戦者たちは微笑ましく見守った。
「毎回、とても面白いな…。」
それぞれに対戦を楽しみ、出会いを楽しみ、級を上げていく面白さに、参加者達は「あと二回でこの楽しさも終わるのか」と残念がった。
初回から十日経って、四回目の『タラゲームの集い』の日に、思わぬ参加者が現れた。
出席者とは違う扉から、にこやかな母と共に現れた普段着の青年。
「まぁ…!ノワール殿下…。」
ヴィオラは、生まれて初めて驚きで気を失いそうになった。
サロンの扉を閉めた時とは別人のようなノワールの親しげな笑顔に、ヴィオラは王都を二人で歩いた時の楽しい気持ちがよみがえるのを感じた。
「普段着がドレスコードだと言うのは本当だったんですね。」
ノワールは戸惑いながらも面白そうに笑った。
「ええ…。」
ああ、またこんな風に笑いあえるとは思わなかった…。
「やぁ、ノワール殿下。来たね。」
「ご無沙汰しております。」
「初めまして、ノワール殿下。ルイと申します。」
「初めましてルイ王子。『タラゲーム』がとてもお強いと聞きました。教えていただけますか?」
「いいですよ。こちらにどうぞ。」
どうやら、母も兄もノワールが来ることを知っていたらしい。
ヴィオラは呆気に取られて母を見た。
母は、にっこり微笑むとまた戻っていった。
その後ろ姿を見守りながら、ヴィオラは自分の感情をどのように持っていくべきか忙しく考え始めた。
非公式の訪問に違いないが、セヤに留学中の自分が率先してもてなすべきだろうか、ただ、兄とノワールも仲がよい。
タラの貴族の子女がこれだけ集まる中で、どう振る舞うのが正解なのだろう。
今日こそ兄と、どこかのご令嬢を対戦させようと思っていたヴィオラは、それどころではなくなった。
タラの国王から、セヤにヴィオラの休学が伝えられ、復学は早くて二月だと知ったノワールは、衝撃を受けた。
父から聞いた話では、ことによるとそのまま退学する可能性すらあった。
ノワールは、自身の配慮が足りずヴィオラ王女の不調を招いたことを詫びると共に、少しずつ元気になってきていることへのお祝いと、良ければお見舞いに行きたい旨を手紙で伝えた。
娘に、学園をやめさせたい国王は「お気遣いなく。」と言った程度の気持ちであったが、親友の息子ノワールの来訪を断る理由もなかった。
娘に、学園生活を続けさせたい母は、ノワールが見舞ってくれればまた学園に戻りたくなるのではと、ノワールの来訪に大歓迎の意向を示した。
王妃は、夏に戻った時にはノワールとの楽しい思い出をよく話していた娘が、秋から今までノワールの話をしなくなったことに気がついていた。
だが、こうしてわざわざ見舞いを申し出るくらいなのだから、どうやら仲違いしたわけでもなさそうだ。
最近は元気になってきているし、学園に戻りたいと思うきっかけになればと期待していた。
ルチェドラトは、自身のお見合いを兼ねた『タラゲームの集い』で、ダンテを仲間に引き込み、ご令嬢との対戦を徹底的に避けていた。
初日に一度ダンテに小言を言いに来た母は、その後意外なほど静かになったが、ヴィオラが、毎回のようになんとか自分とご令嬢を対戦させようとしていることに恐怖を感じていた。
『タラゲーム』で、相手の人柄が…。と言った話は確かにしたが、この集いの中でご令嬢と親しくなるつもりもない自分は、このままだと、当初の目的とずれ始めたことに気がついていないヴィオラによって『タラゲーム』が強いご令嬢とだけ対戦することになる。
『タラゲーム』が強い相手となら親睦を深める。等というおかしな流れに乗るつもりのないルチェドラトは、丁度よく連絡が来た「ノワール」と言う外部刺激によって、その辺りがうやむやになるだろうと考えた。
思惑はそれぞれ違うが、意見の一致を見た三人はノワールを離宮に招いた。
ヴィオラには内緒にしておこう。その方が混乱に乗じて「お見合い」の目的が忘れ去られる…。
「頑張っているヴィオラに、初めて企画した公的な王女主催の集いにセヤの王太子も参加したと喜ばせてやりたい。当日までノワール殿下が出席することは伏せておきましょう。殿下にもその旨私から説明しておきます。」
こうして、『タラゲームの集い』は大成功のうちに終わったが、王妃とヴィオラによる「ルチェドラトのお見合い」は失敗に終わり、王妃による「参加者たちの情報収集」は、ゲーム会場に送り込んだ多くの
国王とルチェドラトによる「ヴィオラの退学」は叶わず、王妃による「ヴィオラの復学」が成功した。
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