独りぼっちの冬景色

@Raoko

独りぼっちの冬景色

 人には表と裏がある。

 表の顔、表の言動、

 友情や愛情にも裏表がある。

 無ければ旦那デスノートなんてサイトが生まれるはずがない。

 私(蕾 冬子)も表の顔と裏の顔を持った人間だ。

 いや、


 劣等型人間だ...。


 4月

 私は高校の新1年生になった。新しいクラスに知り合いはいない。

 でも誰かを仲間にしないと初手から躓くことになる。

 それはRPGでチュートリアルをスキップして何もできなくなった愚者と同じ。

 私は前の席の子に声をかけた。

「次ってどこの教室だっけ」

「...次は、B棟の1階の保健室だ、分らないから一緒にいこっ」

「うん、いいよ、私もあまり覚えてないけどね」


 なんて友好的な人なんだ、無垢な感じ。

 この子(塩見 咲)はこの学校ですぐに友達を作れるタイプだ。

 小中を通って人がどんなタイプかは大体想像つく。

 この子は友好的でフレンドリーな子だ。


  知らんけど


 それはさておき私たちは保健室についた。

 保健室に行く間もこの子がいろいろな人に話をするからいつの間に友達の輪ができた。

 そこに私もいるのが違和感を感じる。

 でも、別に友だちなんて6~7年ぐらいしたら忘れる存在だ。

 この輪では適当に流そう。

 でも、半年ぐらいは仲良くやっていかないと学校生活が難しくなるだろう。

 だから私は。


 表の顔で愛想を振り続ける。


5月

いまだ寒い。

この月のイメージカラーは個人的に緑だと思う。

でもまだ寒い、でもごくたまにクッソ熱い日もある。

まるで私の心のように不安定だ。


今日も学校へ登校しては咲率いるあの輪で適当にふざけて一日を通す。

あの輪のおかげで私は孤独では無かった。

でもちょっとしたズレを感じる。

でも社会を生きていく上でそんなこと気にしていたらダメだ。

他人といい関係を築くのは相手の生活感も尊重しなければならない。


とてもめんどくさい。



6月

熱くなった。

溶ける、死ぬ。

去年やおととしはまだ涼しい季節じゃなかったのか6月よ。

これが地球温暖化というものか。

人類よとても哀れだ。

社会の人たちは声をそろえて「節水しろ」というが。

実際節水してる大人を見たことがあるか。


皆社会では表の顔なのだ。

それはそうと学校生活も表や裏が見えてきた。

愚痴を言う人や性格が変わる人。

別に私に関係ある者じゃない、かかわるだけ無駄だ。

中学3年生の頃私は常にクラス、いや学年から裏の顔でいろいろ言われてた。

理不尽な人もいるし、噂だけで私を判断する人もいる。

こんなところが嫌だから私は誰も知り合いのいないこの学校を選んだ。

でもここも中学と同じ、いとも簡単に他人の愚痴を言う他人がいる。

でも、私が所属(?)しているこの輪は皆表も裏もない。

元気がいい子の集まりだ。

咲はとても元気がいい。流行りのゲームが好きなだけのJK

桜田 開花は勉強熱心なJK。

勉強やりすぎて逆に怖い。

後は2人名前は覚えてないがオタクのペア。

携帯でアニメや創作物ばっか見てる。


名前を覚えてない時点で適当に流しすぎだと思われるがそれがちょうどいい。

人間関係なんてめんどくさいから。



7月

夏休みだ。

私は特に遊ぶ相手がいないから久々に孤独を支配できる。

独りの時間は好きだ。

自分に関して悩んで考えて、だれにも邪魔されず趣味がまっとうできる。

でも、この夏休みに孤独に依存すると大変なことになる。


でも私は孤独を愛してる。一人の時間ほどいい時間はない。

無いけれど、孤独すぎると寂しくなる。

でも約1か月の孤独タイム程嬉しいものはない。

なので私は

一人でゲームをして。

一人でネットサーフィンして。

一人で買い物して。

独りでゲーセンに行って。

独りで枕を抱えて携帯でまたネットサーフィンをした。


楽しすぎる、誰のことも考えなくていい。

自分のことだけど考えてていい時間。

最高すぎる。


あぁ孤独は素晴らしい。


メール来てもちらっと見て無視する。


7月〇〇日

シャワー浴びて夜風にあたりたいから公園に出かけた。

夜の公園での夜風が程よく気持ちいのだ。

誰もいない。ここでも孤独。

この公園を独り占めしてる。

なんてすがすがしいのだ、


「ざざっ」


............??


孤独では無かったようだ、すでに誰かがいた。


「こんばんは」


私は愛想MAXで挨拶をした。

相手は中3ぐらいの女の子。

こんな子がこんな時間に何をしてるんだろう。


「お姉さんなにしているの?」


暖かい笑顔で私に聞いた

とても暖かい笑顔だった。

星のように明るく夜風とは対照的に暖かい。

暖かすぎる。


「夜風にあたってたんだ。シャワーを浴びた後だから気持ちがよくなるの」

「そうなんだ...。」

「ん?」

「お姉さん、心の中が冷たい」


な、なにをいいだすんだこの子は。

初対面の人に(しかも多分だけど年上に)なんてことを。

でも私は実際冷たい人間だ。

辞めようと思えばすぐ友達を辞めれる。

別れようと思ったらすぐパートナーと別れる。

だって人間関係ってそう思っちゃえばすぐ忘れられるから。

っていう思想がある時点で私は冷たいな。


「お姉さん、冷えたてのアイスみたい」


こ、この子。

保護者はいないのかっっっ。

無礼にもほどがあるだろ(人のこと言えないが)

でも実際冷えたてのアイスなのかもしれない。


「き、君ぃ~、初対面の人に対してとても辛辣じゃないかなぁ~」

「私はずっとお姉さんを見てたよ」

「え?」


私は聞き返すとその子は上に指を刺した。

刺した指につられて夜空を見た。

夏なのに星が綺麗だった。

星座とかよくわかんないけど、顔みたいなのや人みたいなのが見える。


ってそういう事を今考えているんじゃない。

なんでこの子は上を刺したんだ?

からかっているのか?


「君ぃ~、なんで空をさしたのだい?」

「そこでずっとお姉さんを見てたから」


だめだ、年頃拗らせガールに何を言っても無駄だ。

これが中二病なのか。


「にしても星が綺麗だねぇ。」

私は眼鏡を支えながら上を見ながら言った。

「お姉さんも綺麗」

「...あっ、ありがと。」

「お姉さんに孤独は似合わないよ。もっと明るく振舞って。」


なんなんだこの子は、そろそろ注意したほうがいいかな。

自分の生き方を否定された気分だ。褒められているのだと思うけど。


「私はまた空に戻るね」


また拗らせたことを言っている。

でも私はちゃんと年上のような振る舞いで手を振った。

これも愛想だけど...。


あの子は優しいぬくもりを置き去りにした


8月

夏休みが終わって学校生活にも慣れてきた。

でもやっぱり孤独が恋しい。

学校に行くと呼んでもないのに今までいた輪の人たちが寄ってくる。


うざったい。


だから私は「人づきあいが怖くなった」って嘘をついて愛想を振った。


冷たい態度を取った。


近寄らないでほしいと思った。


相手も懲りたのかしばらく近寄らなくなった。

これでいい、これで夏休みが過ぎても孤独を楽しめる。


8月後半

なぜだ、なぜだか寂しい。

孤独に生活しすぎた上に周りには青春うっはうは学生が山ほどいる。

孤独が好きなはずなのに寂しいなんて。

矛盾してて気持ち悪い。

試しにあの輪の人に話しかけてみる。

「おはよう」

いつもなら元気のいいおはようとうざったいハイタッチが来る。

今日はどうだ?


「あっ、おはよぅ」


声がこごもってる。これは愛想が尽いたな。

これはこれで好都合だ。



まぁ寂しいと思ったら4月みたいにまた新しい輪を作ればいい。

っと言いたいところだけど、8月となると皆それぞれのグループができている。

その中に話しかけようなんて陽キャがやること。

私みたいな陰キャができる凄業じゃない。



9月

肌寒くなってきた、私の好きな上着を着ていくような季節になった。

厚着は好きだ。体のラインを隠せるから。


夜になるのも早くなった。

クラスのグループも皆めちゃくちゃ仲良さそうに話してる。

もちろん私が所属(?)していた輪も仲良さげに話している。


別に私はネットと携帯があれば暇は潰せる。


10月

特にない。

本当に特に無い。

あるとしたらハロウィンってだけ。

なんでこんなにも不名誉な月があるのだろう。

なにかを感じるようなことはない。

強いて言うならば、紅葉が綺麗とか。

別に紅葉にすんとも興味はないが。


しいて言うならごはんがおいしいかな。

と言ってもスマホやPCの前でインスタントしか食べてないが。


秋風を感じたくて夜、外に出て見た。


あの夏休みの星の綺麗な夜空を思い出した。

あとついでにあの中二病拗らせガールちゃんも思い出した。

「あの子は今頃受験勉強なのかなぁ」

んまぁ、他人のことなんかどうでもいいがな。


11月

寒くなってきた

私の孤独感も寒くなってきた。

待ちを歩いているとカップルやとても仲良さげなグループが嫌でも目に入る。

やはり私はそういうものに興味がわかない。

相手のことをわざわざ考えないといけなくなると思うと嫌になる。


いつもの公園についた。

こんな寒い日なのに子供はとてもはしゃいでいる。

私も小さいころここではしゃいだのだと思うと少し恥ずかしくなってくる。

いろんな子供が汗をかいている、こんな寒いのによくもまぁ汗をかけるなぁと思った。


私も、チビの頃はこうやって汗を流してたんかなぁ。


なんか冷たい感触がほほをつたった。





気づいてたら眠っていた。

今は何時だ、19時か。

厚着していたからおそらく風邪はひかないだろう。

「さぁって、帰ろうかしら」


ベンチから腰を上げたとき、人がいるのに気づいた。

(っ、人がいたのか、できれば独りが良かったが...)


「お姉さん、どうして、人を避けるの?」


「...っ、この声は、夏休みの時のぉぉ」


ちょっと嫌気がさした。


その子は約半年前と何も変わってない。

あの図々しさも変わってない。


「...私は、お姉さんが綺麗で好きで、いつも空から見ていた...」


(...!、クッ...照れる事言うじゃねぇか)

ってなんだよ私口説かれてんのかよ。


「だから私もお姉さんみたいに髪を伸ばしてた...」

「そ...そうか。とりあえず感謝はする。」

「私は...。お姉さんに生きる理由...もらった」

(?)

「あなたに...恋をした...。だから...あなたをずっと...見ていたかった」

「...」

「でも...いつもさみしそうで、でも...。」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


ガバッ


(照れるじゃねぇかよもぉぉぉお、何なのよ本当にこの子はぁぁぁああ)

(まだ2回しか会ってないのにめちゃくちゃ言ってくるじゃないかぁぁぁぁ)

(口をふさぐためにとっさに上着投げつけたが...大丈夫だったかな...。)


「ふふ...。お姉さん...笑うんだ」

「え?」


慌てすぎてて自分がどんな顔をしているのかわからなかったが多分、めっちゃ赤面しながらにやけてるんだろうなぁ。


「私...おねえさんに笑ってほしいから...」


まだ何か言ってる、でも私は照れ隠しに夜空を見上げた。

あっ、笑顔だ。


夜空の星々をつないだら、あの子の笑顔が。


「くしゅんっっ」


あっ、そういえば上着返してもらおうか。

そう思って振り返ったら、そこにはベンチに上着があるだけ。


「あれ、あの子は...。」


あっ、そういうことか。

そうなんだな、君は。あの一等星なんだな。


ということは、やっぱりいつも見られてたのか...恥ずかしいな。


私は上着を取って着た。

冬の寂しさが消えて溶けていった気がした。


「きみはもうひとりじゃないよ」


上から声がした。見上げて見たらさっきの一等星がさらに光ってる気がした。


「もしかして君は冬の妖精?」


12月

姉が冬休みだから東京から帰ってきた。

緑髪をした短髪。なんとなく夏が似合ってると思う。

そういえば姉も公園で年下の子と遊んでたって言ってたなぁ。


それってもしかして夏の妖精かもね。


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