第2話 今日も今日とて猫まみれ。〆は桃毛で
【氏名】
【身長】
150.3㎝
【体重】
47.8㎏
【生年月日】
八月生まれ 十五才
【所属】
【容姿】
クセ毛でピンク色
長さは肩に当たらないくらい
ツーサイドアップ
丸くて大きいややツリ気味の目
【性格】
短気
喧嘩っ早い
【備考】
当時のその年に県外から越してきたらしく。入学当初はそこまで目立っていなかったらしいが、数日経つと急に髪を染めてきたらしい。
それからは地元の不良たちに絡まれるようになるも、喧嘩がたいそう強いらしく、二ヶ月で全員シメたそう。
超問題児だから、単に群れるのが嫌いかは定かではないけれど、学校でも学校外でも一人らしい。
これが彼女の現時点での俺のわかる範囲のプロフィールかな。
お~っとそういえば俺はまだ自己紹介してなかったかも~――え?
ごほん。話を戻して。
これは今までの彼女のプロフィールではあるんだが、一般的に知られてたりする範囲でのね。
……身長と体重に関してはある筋から入手したとだけ。その辺りは機会があればいずれ。
で、このプロフィールに『コスプレして夜中に徘徊、塀の上をダッシュを添えて』が追加されたわけだ。誰が見るでもないけどとりま俺だけの彼女の欄にみたいな感じで。
さて、ここでよく考えてほしい。
もし、君が誰にも見られないからと夜中にコスプレをして出掛けてたとしよう。
それで、テンションが上がって変な走り方をしたとしよう。塀の上を走るなり、小躍りするなりでもなんでもいいから。
で、それを目撃されたとしたらまずガチッと硬直するかダッと逃げると思うんだけど。後者を選んだとしよう。
そうなったらたぶんだけど『もう会わない相手だし』と、心の中で自分自身に言い聞かせると思うパターンもあると思うんだ。羞恥心に悶えないようにさ。
もう会わない相手ならもう気にしなくて良いわけで。でも、俺と
だって、同じ学校なんだから。なにかのキッカケでエンカウントもあり得る。
もし。もしも、だよ。君が同じことをして、同じ学校や職場に目撃者がいたとして。
なまじ自分の腕力に自信があったとしたら。
どうする?
君ならどうするね?
☆*☆*☆
「んな~」
「にゃお~」
「んなにゃにゃっ。ふにゃう!」
「フシャア!」
「はいはい。皆おはようね~」
うんうん。今日も今日とて朝から元気にお猫様たちからのあいさつ。
ただ一部元気良すぎて引っ掻きあったりおっ始めたりはやめてくれまいか?
少なくとも人の足元ではやめてほしい。
っと、猫だけにあいさつしてちゃいかんね。クラスメイトにもしないとね。特に、たまたま登校時間が重なった
「おはよう。
「……おはよう」
ん~。相変わらず
でも、これも相変わらずっちゃ相変わらずなんだけど。目付きが悪すぎて眉間と鼻の上にシワがめっちゃ寄っててブサイクになってるけど良いんだろうか。顔立ちは良いのに表情で台無しなのは女の子として良いのかなそれ?
「……なに? 人の顔をジロジロと」
「いや、美人さんだなーと」
「……チッ」
誉めたのに照れるでもなく舌打ちされてしまった。ちょっと辛い……ってわけでもない。
だから、返事してくれてるってだけで嫌われてない証拠。だと思いたい。それに俺たちは――。
「んな~……ゴロゴロ♪」
「……今日もなつかれてるわね」
「ぅみゃ~お♪」
「お互いね」
「……ふんっ」
共通点あるもんね。猫に好かれやすいっていう。
俺も冬鐘もただ歩いてるだけで足に猫がすり寄ったりへばりついたりしてるんだよね。マジで好かれるんだよなぁ~。
「いや~モテちゃって辛いね~」
「そうね、歩きづらいし」
「…………」
まぁ……うん。そうだね。時間あるときは良いけど登校中はやめてほしいね。遅刻は御免被る。
けどちょっとペース上げると――。
「……! んにゃにゃおぉ~お~!」
「ちょっ!? やめなさいって!」
抗議のハグからの噛み噛みが飛んでくるんだよね!
くそう……。こっちの都合も考えないでこのお猫様たちはよ! ワガママさんめ!
じゃれつかれるのは嫌いじゃないけどマジで時と場合に寄るからな!
「まったく……」
おっと。さすが冬鐘。秒で諦めモードに入ったみたい。じゃあ俺もそうしようかな。
「ほらほら。こっちゃこい。……よっこらしょっと」
俺たちの諦めの境地。即ちそれはだっこなのだぁ。
すり寄る猫をひたすら体にへばりつかせたり脇やら両手やらで抱えていく。これなら歩くペースはある程度確保されるからね。
ただ、今は梅雨明け間もない湿度高めの夏なわけで。あっっっっつい!
あと薄手だから体に張り付かせようものなら爪が刺さる刺さる。今夜の風呂は拷問じゃい。
冬とかはぬくいんだけど夏はマジでちょっと……ね。
冬でも嫌っちゃ嫌だけどね。毛だるまになるから。処理が大変。毛は夏でも処理大変だけどさ。
「あら可愛い」
「はぁ~?」
こっわ。隣に猫まみれの美人さんがいたのに一瞬で顔面のパーツをド真ん中に集めたい妖怪みてぇな
「前から思ってたけど、瀬和くんってナンパ野郎よね」
「ぅえぇっ!? なんでぇ!? 俺そんな女子にばかり話しかけないけど!? 冬鐘はいつも一人で俺くらいとしか滅多に会話っちゅー会話しないからそう感じるかもだけど。俺今までそんな女の子としゃべったことないもん!」
「何気に失礼なこと言ってる自覚あるかしら? 否定はしないけど」
「あのぉ……そっちが先に失礼なこと言ってるからね? 否定させてもらいますけど」
もし俺がナンパ野郎だったら今ごろ彼女できてるし。
なんなら別に女子と話すことに臆したりしないって自負あるし。
その上でできたいんだし。生粋のモテない男だし。
はー泣きてぇ!
「はぁ……にしてもあっつい。やっぱりこの時期はダメね。もう限界。猫ども。あっち行って」
「え!? 急に!? てか俺もアツいからこれ以上増えるのは――」
「「「んなぁ~」」」
「なに元気に返事してんだお前らぁ!? 今だけ素直になるなってぇ! あ、やめっ。いだだだだだだっ!」
あーあー。群がる群がる群がりよる!
そしてたくさんの爪が刺さってくる!
念のため予備のワイシャツは持ってきてるけど何着ダメにしたかわかってるか貴様らぁ!?
「ふぅ……じゃ、そいつらよろしく」
「いやちょっとこま――」
ブラガアセデスケテーラ。
って、いかん。思わず外国語みたいな言い回しになっちゃった。口に出さなくて良かったね二つの意味で。
いや~でも、マジそうなっちゃうくらい眼福眼福。
冬鐘は俺とあんま変わらないくらい身長高くてスレンダーだから正直足のが見たいまであるけど、女子の下着見る機会なんて彼女持ちでない限りほぼほぼないのでそんな贅沢言えない。見れるだけ奇跡。
しかも極力誰とも話さないしキチッとかしこまるような
ありがたやありがたや。いやー猫にまみれた甲斐があったね!
……ん? あれ? そういえば昨夜も女子の下着見てるじゃん。二日連続で奇跡起こってんじゃん。しかも昨日はパンツで今日はブラ。上下そろってんじゃん!
しかし、一晩ぐっすり寝たとはいえあんなインパクトあることを忘れるとは不覚……。でも大丈夫。今はもう鮮明に思い出せる。なんなら冬鐘のブラとセットで記憶した。二度と忘れねぇ。
あ~今月の俺、とてつもなくツイてるかもしんない!
「……そんなに猫にへばりつかれて嬉しい? 汗だくになってるクセに。マゾなの?」
「うん。俺は今(別の理由で)とっても幸せなんだけど、俺がこんなに汗かいてるのは半分は冬鐘のせいだからね? だからマゾはやめてくれない?」
これでも健全な男子なんです。なんならそこまで気構えもできてないんです。
だからこそ、俺は今こうやって夏に
これで帳尻あってくれる信じてね! こんなラッキー続いたら次どんな不幸がやってくるかわかんねぇもん!
「どうでも良いけど、遅れないようにね。遅刻しても私は困らないけど」
「え、せめて一緒に行こうよ」
「全身猫にへばりつかれてる変態と一緒にいたら私まで変人に見られるし」
「
「……じゃ」
「あ、ちょ、ごめんて! 置いてかないで!」
「私は薄情で希望制ボッチだから嫌」
「そんなバイトじゃないんだから……って
速っ」
身軽になったからか歩くの超速ぇ。もうあんな遠くに。
うぅ……急に一人になって寂しい。猫もいるし周りにも登校中の生徒はいるから一人ってわけじゃないけどさ。
でも、皆が皆視線を向けこそすれ話しかける様子はなし。たまたまクラスメイトがいないんだろうね。唯一だった冬鐘はもう行っちゃったし。
きっと、この猫まみれと取り残されたが故の孤独感が俺への罰なんだね……。二つでパンツとブラの分だわ。ちょーど良いね。釣り合い取れたね。
さて、立ち止まってたら遅刻しちゃうし。わんちゃん冬鐘に追い付くためにも。
「はぁ、行くかあ~」
「「「んなぁ~」」」
うん。独り言だったんだけど返事してくれて嬉しいよ。
校門まで話し相手になってくれるか――。
――ボトン
「「「……! んにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!」」」
「うわ!? な、なんだよ急に~!」
なんか後ろで物が落ちる音がしたと思ったけど。お前らあのくらいの音でビビるようなそんなタマじゃないだろ!? 猫だけにタマ!
……あーさぶいさぶい。ついさっきまで猫まみれの汗だくだったから落差で寒く感じるね。つまらないダジャレのせいじゃないねこの寒さは。きっと。
で、猫どもが逃げていったであろう音の主はいったいなんなんだい――あれ? いつの間にか他の生徒もいなくなってる。なにかあったのかな?
「…………」
いや、一人いた。しかもすごい見覚えがあるのが。
忘れようもはずがない。ついさっきだって思い出してたんだから。
あの桃色のクセっ毛に二つ結び。猫みたいなおめめ。ワイシャツでテントを作ってる胸部装甲。そしてきっとスカートの中は
「あ、あんた……昨日の……」
「……ッ」
「あ、逃げんな!」
いや逃げるでしょ!? 昨日パンツ見たんだよ!? そんで顔覚えられてんだよ!? しかもあんた喧嘩上等の不良じゃん? そんなん逃げるじゃん!
「待てゴラァ!!!」
「いぃぃぃぃぃいやぁぁぁあああああ!!!」
追っかけてくるぅ!? 逃げてるからそりゃそうなんだろうけど!
でも、立ち止まるわけにはいかないっ。こんなところで死にたくないんだよ俺は!
くそう! さっきの猫まみれと置いてけぼりじゃパンツとブラ見た罰にはならんてか神様!?
……俺もそう思う!
☆*☆*☆
とまぁ自己完結しながらも追いかけっこが始まったと。
結論から言ってあの場はなんとか逃げ切れたんだよね。
先日あんな身体能力を見せながら調子が悪かったのかなんなのか。
それとも単に俺が死の危険を感じたから火事場の馬鹿力が出たのか。真相は定かではない。
ただ一つだけわかってるのは。
あの場を逃げ切れたところで問題を先伸ばしにしただけってこと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます