第15話


「で、どこから説明するつもりですか」


「まぁそう焦るなって。話はひと月程前に戻るぞ」


「そんな前から?!てかトンさん家族は?」


「それが、ひと月程前に嫁が子供たちを連れて出て行った」


「え?そんな事があったなんて知らなかったです」


「原因は俺の家庭への関心の無さだったらしい」


「トンさんは家族の為に一生懸命働いてたじゃないですか」


「嫁的には積もり積もった怒りが爆発したんだと」


 トンさんは相当ショックだったのと家族が急にいなくなった寂しさから、ギョプの話を思い出して検索したらしい。


 そして地上に来たと。


「え、じゃあ俺に地女の話をした時はすでにこっちに来てたって事ですか?」


「まぁ、そうなるな。スイッチ制度の話を知ってアニにいい人を見つけて欲しかったんだよ」


「なんで早く言ってくれなかったんですか?」


「いや〜、ちょっとからかってみたくてよ」


 トンさんは悪びれる様子もなく笑っている。

 

 なんというか、性格が良いのか悪いのか分からない。


「最初は俺も大変だったが一ヶ月もすれば慣れたもんだぞ」


「そりゃそうでしょうね。で、どうやって行き来してたんですか」


「そんなの簡単だよ!来た時と同じ事をすればすぐ帰れたぞ」


 という事はネットで検索して真っ暗な画面から音声が聞こえて帰りたいとでも伝えるのか。

 正直今のところ特別帰りたいとかはない為、参考程度に聞いていた俺。


「ところでトンさんはなんで行ったり来たりしてるんですか?」


「そりゃあ‥‥もしかしたら嫁と子供が帰ってきてるかもしれねぇから時々確認しに帰ってるんだよ‥‥」


 なんとも情けないやら可哀想そうやら。

 それにしてもトンさんは何故見た目が変わっているのか?


「てか地下に戻った時は容姿も戻るんですか?」


「そうなんだよ!なんで地上にいる時だけこんな男前なんだ?」


「それはこっちが聞きたいですよ。知らないんですか?」


「知ってるわけねぇだろうよ。俺も驚いたんだ」


「少し羨ましい気もします」


「しっかしよぉ、こんな男前なのにぜーんぜん誰からも声かけられねぇし出会いもねんだよ。お前はこっちに来て出会いはあったのか?」


「あ、いや。ありません」


 なんだかトンさんにカエさんの話をするのを今はやめておいた方がいい気がした。


「話が違うよな本当、地女と出会えるってゆうから来てんのによ」



 これは俺の予想だが、トンさんは見た目が良くなってもこの性格のせいでモテないのだろう。

 性格が良くない分見た目を良くされたとみた。


 俺は見た目は冴えないが、頭もよく性格も問題ない為このままなのだろう。



 しかしなんで現実にこんな事が起きているんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る