第16話
トンさんとはアパートで話をした後、解散した。
俺は気になっていた。
何故、地下と地上で出会える場を設けたのか。
地上にも男性はいるし地下にも女性はいる。
俺は気になったらとことん調べないと気が済まない性格だ、少しでも情報を集めなければ。
しかし地上で知り合いといえばトンさんとカエさんしかいないが、カエさんに聞くのは少々違う気がする、そもそも一般人が知っているような情報ならもうすでに知っている。
そして俺が考えついた方法はこうだ。
役所に潜入する。
やはり情報源に近づくのが1番だと思う。
早速次の日、役所に向かった。
「すみません、面接をお願いしたいのですが」
「面接ですね、少々お待ち下さい」
人手の足りてない役所は常に面接を行っているようだ。
しばらく椅子に座って待っていると、職員の人に呼ばれ、案内された個室に向かう。
「どうぞお掛けください」
「はい」
凄く緊張している。
面接なんて何十年ぶりだ。
面接の内容は至って普通だった。
そして、俺の頭の良さが伝わったのか即採用となった。
役所は激務だが、入ってみれば中は口が軽い人間が意外にも多かったのだ。
外部には言えない事も職員同士なら筒抜けだ。
まず俺は書類の整理などの雑用をする事になった。
片手間でするにはこれが好都合だった。
一緒に作業をする事になったシンさんもまた最近採用されたばかりらしい。
「シンさんはなんで役所で働こうと思ったんですか?」
俺は何気なく聞いた。
「僕は、この国が大っ嫌いなんです」
「大嫌い?それはどうして?」
「正直腐ってますよね」
なんかやばいやつと一緒になってしまったと先行きが不安になっていた。
俺は軽く聞き流すつもりで会話を続けた。
「腐ってるとは?」
「もちろんご存知とは思いますけど、女性に配られたスイッチあるじゃないですか」
「あぁ、あれですね」
「僕そのスイッチのせいで大事な彼女の初めてを‥‥」
「誰かに奪われた‥‥?」
「‥‥はい」
「それで彼女とはどうなったんですか?」
「どうなるもこうなるも初めてを奪ったやつに心まで奪われてしまったんですよ」
シンさんはとても悔しそうに顔をしかめていた。
「それは残念でしたね」
少し面倒くさくも感じていた時、俺にとっては願っても無い情報が入った。
「僕はね、この制度を恨んでるんですよ。だから潜入捜査をしてるんです」
「それ俺に言っても大丈夫なんですか?」
「大丈夫です。アニさんは入ったばかりで何も知らないでしょうから」
随分脇が甘いというか単純というか、俺にとっては都合が良いが。
「それで、何か分かった事はあるんですか?」
「はい、潜入してもうすぐ二週間が経とうとしているにも関わらず僕はあらゆる情報を入手してしまったのです」
「‥‥どんな?」
「誰にも言わないって約束出来ますか?」
「もちろん、口は硬い方ですよ」
「実はこのスイッチ制度の真相はズバリ!少子化対策なんです!」
「‥‥た、確かそうでしたよね」
期待して損だった。
少子化対策の事はトンさんから聞いていたし国民なら知ってる情報じゃないのか。
「あとこれは極秘なんですけど」
「はい、なんですか」
「どうやら少子化対策はスイッチだけじゃないらしいんですよ」
「どうゆう事ですか?」
「アニさん、地下ってあると思います?」
「ち、地下?地下鉄とか?」
「まぁ普通そう思いますよね。でも僕が言ってる地下はもっと奥深くにあり、人が暮らしてるんですよ、地上のように」
「お、面白い想像ですね」
「これは想像ではないんですよ」
「というと」
「現在地上には約80億人が暮らしている、それに対して男女比率が男20%女80%と圧倒的に女性が多いんです」
「はぁ‥‥」
「しかし極秘調査によって判明した地下の人口は約1億人、男女比率は男90%女10%と圧倒的に男性が多いんです」
「もしかしてそれって」
「気づきましたか。そうです、地下の男性を地上に呼び、地上の女性と出会わせる。これが本当の少子化対策なんですよ」
「まさかそんな事が‥‥」
あり得る。十分にあり得る。
でもこんなに出来た話簡単に信じていいのか?
「しかしどうやって地下の男性を呼んでいるのか、それがどこで行われているのかは僕はまだ突き止めれてはいなくて」
「でもよくそこまで調べましたね」
「僕人の話し盗み聞きするの得意なんです、今までもそうやって色んな人の情報売ったり売らなかったり」
「うん、今の話は聞かなかった事にしますね」
「冗談ですよ!でも盗み聞きは本当です」
「しかし突拍子もない事しますよね国も」
「まぁ今はまだ試験中らしいんですけどね」
「試験中?」
「こんな試み本格的にするにはまだ未知なんじゃないですかね」
って事はいつかは終わるかそのまま継続するのか分からないってとこだな。
そう言えばギョプはどうしてるんだろう。
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