第4話
俺が浮かれていると、いきなりドンッと誰かがぶつかってきた。
ってーな!と後ろを振り向くと、そこにはぞろぞろと人の姿が。
そういえばさっきの女の人、ラッシュがどうとか言ってたけどもしかしてこれの事か!
すると、大きな音を立てて四角い塊があちこちに移動している。
ブハッ!臭い!
これは車ってやつか、こんなにうるさくて臭いとは。
せっかくの空気が台無しじゃないか!
この臭い空気は一体どこに行くんだと上を見上げると今度は白いふわふわしたものが浮いている。
おー!あれは雲!そして背景が青いぞ!
これはなんとも綺麗だなぁ。
俺はまたもぼーっとしてしまっていた。
あ、いけない!俺は現場に行く途中だったんだ!
でも待てよ、よく見るとこの道って俺がよく通勤で通る道に似てないか?
俺はもしかしてと思い、地下での道を思い浮かべながら現場まで向かってみる事にした。
プップー!!と大きな音がして、
「そんなとこ歩いてんじゃねーよ!」
と大きな車に乗った男が言った。
「す、すみません!」
あんな大きな車もあるんだな、ビックリしたぁ。
俺は車や人を避けながら進む。
やっとの思いで着くと、その頃にはもうヘトヘトになっていた。
やっぱりそうだ。
俺の予想通り、一見すると全く違う景色に見えているが、地下と連動しているかのような配置だった。
そうと分かれば楽勝じゃないか。
どれどれ、トンさんはいるかな。
「おはようございます!」
いつものように現場に入る。
もちろん現場もいつもの材料や道具はなく、見た事のない物ばかりだった。
「おー、今日もアニは元気だな!」
「トンさん!」
俺はとてつもなく嬉しかった。この地上で知っている人がいるなんて。
‥‥‥ってトンさん?
俺がトンさんだと思って近づいてみると、それはトンさんのようでトンさんじゃない。
「トンさん、ですよね?」
「何言ってんだよ!あたりめーじゃねーか」
何かが違う。
そう、俺の知ってるトンさんは、ギョプに負けず劣らずのチビデブハゲなのだ。
しかし、今目の前にいるトンさんは別人かと思うほどスマートで髪もフサフサ、すらっとしている。
「トンさん痩せました?」
「は?これ以上痩せたら骨になっちまうよ!」
喋るとトンさんだ。
「あの、一つ聞きたいんですけど、ここって地上ですよね?」
「アニ今日は一体どうしたんだ?地上に決まってんだろ?」
「トンさんと俺は地下に住んでますよね?」
「地下?地下鉄の事か?」
「‥‥地下鉄?なんですかそれ」
「本当にどうしたんだよ?今日は帰った方がいいんじゃねーのか?」
「え、覚えてないんですか?俺たちは地下に住んでて、トンさんが地上の女に会えるって言って教えてくれたじゃないですか!」
「地上の女?地底人にでもなったつもりか?」
「え‥‥‥」
「てかよ、遅刻だからな!そんな分かりやすい言い訳して通じると思ってんのか?」
「‥‥はい」
「ったく、どっかで頭でも打ったんじゃねーのか」
だんだんイラつくトンさんに俺はそれ以上何も言えなかった。
仕方なく、作業に移ろうとするも手順がわからない。
俺は見よう見まねでなんとかやり過ごす事が出来た。
「今日は早く休めよ!」
トンさんに言われ、疲れが半端じゃなかった俺は頭の中を整理しながら帰る事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます